だからこそ、同棲話をもちかけてきたらしい。
「そう、だよね」
雪菜は必死に自分を納得させようとしている。

私がいない寮生活だって、きっとすぐに慣れるはずだ。
「それじゃ、また明日。学校でね」
いつまでも剛志を待たせるわけにはいかなくて、私は自分から雪菜の手を離した。

雪菜はまだなにか言いたそうだったけれど、学校でいくらでも話をすることはできる。
「じゃあ、またね」
と手を振って、私は剛志のものへとかけたのだった。

☆☆☆

最初、やっぱり異性の部屋に入るのは抵抗があった。
白い玄関ドアを見るとどうしても怜也の部屋のことを思い出してしまう。

だけどここは違う。
あいつの部屋なんかじゃない。
前に立って玄関の鍵を開けている剛志の後ろ姿を見て、自分を苦い過去から引っ張り上げる。

「はい、どうぞ」
鍵を開けた剛志がそのまま玄関も開けてくれて、私を先に通してくれた。