雪菜は泣きそうな顔でそこに立っていた。
私は剛志に少し待ってもらうように言って、雪菜に近づいた。

背の高い雪菜が、今はなんだかすごく小さく見える。
私が寮からいなくなることが不安なのかもしれない。

だけどひとりぼっちになるわけじゃない。
他のみんながいる。
それを伝えようと思ったとき、雪菜が私の右手を両手で包み込んできた。

いつかもやってくれたその行為は、優しさで溢れている。
「ありがとう」

私は自然とそう言っていた。
まるで永遠の別れみたいなセリフに自分でおかしくなって笑ってしまう。
また明日学校で会うのに。

「本当に行くんだね?」
もう1度質問されて私は頷く。
「うん。私、剛志と一緒なら乗り越えることができると思う」

「そっか……」
雪菜の手の力が緩む。
「っていっても、ここからそんなに離れてないし、学校でも会えるんだからさ!」

剛志のいるアパートは私の学校からも近い。