「たまには食べ歩きとかしたいなぁ」
「いいね。次は少し遠出をして中華街にでも行こうか」

その言葉に脳裏に黒い車がよぎった。
今までのデートで剛志は車に乗ってきたことはないが、持っているんだろうか。

「剛志って車は持ってるの?」
そう聞くと剛志はバツが悪そうに頭をかいて「免許だけ」と、答えた。

車もほしいのだけれど、高級なものだからなかなか購入まで踏み切れないのだと言う。
「買うとすればやっぱり新車がいいし。そうするとバカ高いしなぁ」

「そうだよね。移動は電車とか地下鉄で十分だもんね」
答えながら内心ホッとため息をつく。

しばらくは車に乗る必要もないということだ。
今はまだ、異性の車に乗るのは勇気がいるけれど、剛志が車を購入するころには平気になっていたい。

だけど剛志が車を購入するよりも先に、予想していなかった出来事が起こったのだ。