「そう言えば、僕たち付き合っているんだから敬語はやめにしない?」
運ばれてきたアイスコーヒーを一口飲んでから、剛志は今気がついた、といった風に切り出した。

私は自分の運ばれてきたメロンソーダから剛志へと視線を移動させる。
剛志は年上だし、付き合い始めたと言っても出会って間もない。

だからそう簡単には敬語が抜けなさそうで、私は眉を下げた。
「無理そうなら、ゆっくりでいいから」
「それなら大丈夫かも」

剛志はこちらの表情をしっかりと読み取って、その時ほしい言葉をくれる。

それは怜也によって散々傷つけられた私にとって、暖かな布団にくるまれているような感覚だった。

剛志と一緒にいるときは怜也のことをすっかり忘れてしまうときもある。
「今日はすっごく楽しかった!」

剛志とデートを重ねるうちに緊張は解けていって、敬語も自然と消えていった。
「僕も。今度はどこへ行こうか」