終電後の公園にやってきた君


 「ただいま」
 「おう、おかえり」
 どうやら私の変化には気づかれていないらしい。アルコールで寄ってきたのか、少しづつ気分が高揚して言っている気がする。
 ごめんね、宮水君。私は私をコントロールできないかもしれない。
 今の私はアルコールインの私だから。

 その後もゲームを続いていく。
 その中で時間を置くことで段々と酒が私の体の中で巡っていく。
 そのたびに理性を失って言っている。
 興奮しているという感じがする。
 「ねえ、このゲームに買った方が負けた方に何でも命令できるってことにしない?」
 私はそう、宮水君に聞く。
 「お、おいそれは、漫画みたいだな」
 漫画みたい。漫画には確かによくあるシチュエーションだ。
 もう脳がアルコールにやられている私にも分かる。
 でも、
 「やろうよ」
 宮水君の腕を引いた。
 まるでカップルみたいだなと、俯瞰して思う。
 「あ、ああ」
 宮水君が断らないことを私は知っている。否、断れない人間であることを。
 場酔いという物がある。
 酒を飲んでなくても、居酒屋とかで酔ったような気持ちになることだ。
 ここは、居酒屋ではない。しかし目の前に酔った女一人。
 流石に、断れる雰囲気ではないと思う。
 「もしかして酔ってる?」
 ばれてしまった。流石にこんなに顔を赤くしてたらという事か。
 「酔ってないよ」
 「嘘をつけ。外に放り出すぞ」
 「そしたら私は酔った状態で一人外で襲われるかもね」
 そう唇に指をあてながら言う。
 男性が好きそうな仕草は何となく知っている。
 そして私は少しづつ顔を寄せていく。
 「ああ、もう」
 イラついた様子で枕に宮水君は顔をうずめる。
 「分かった。その勝負ウケるよ」
 そう、ため息を吐きながら宮水君は言った。
 「俺が勝ったらおとなしく寝てくれ」
 「やっぱりそう」

 そして、私は息を軽く吸った。

 「じゃあ、勝負しよう」

 勝つ自信があるわけではない。
 酒のせいでプレイが雑になる恐れもある。
 だけど、このゲームは運ゲームだ。私は少し必勝法を思い出した。
 早速ゲームが開始した。
 結果は最後に加速アイテムを引いた私が勝利した。
 「くそっ」
 小声で吐き、枕を叩く宮水君。
 「じゃあ、お願い聞いてくれる?」
 そして私が放つのは。
 「ハグさせて」
 「なんでだよ」
 その言葉に宮水君は分かりやすく、戸惑う。
 「それはだめだ」
 「私のお願い聞いてくれないの?」
 「ああ。明日になって、まだしたいんだったら考えてやる」
 「本当?」
 「本当だ。本当に、はぐしたいんならな」
 そして、そこから私の意識は途絶えた。
 私は寝てしまったのだ。

 じりじりじり
 じりじりじり

 目覚ましがなる。その音で目が覚めた。
 「あ」
 私は布団を持ち上げ、立ち上がる。床に宮水君が寝ている。
 きっと私に睡眠場所を譲ってくれたのだろう。
 それと同時に昨日酒と深夜テンションによってしてしまったことを思い出した。
 ハグさせて、ハグさせてって。本当に私そんなことを言ったの?
 酒の力を借りなかったら絶対に言えない事だ。
 私は奥手な性格なのだから。
 「はあ」
 軽く息を吐き、寝ている彼の姿を見る。
 やっぱり顔が整っている。
 私はその髪の毛を軽くさすり、そして家を出て、始発で帰った。
 今でもあの時の事を思い出す。
 結局その後ハグはしてもらったけども、恋人関係になることも無くそれぞれ別の進路に進んだ。

 そして私の隣には宮水君ではない人が寝ている。そして、可愛い私の子どもも。
 でも、私はあの日の事を忘れることはない。
 あの日、宮水君の家に泊まったことは一生の思い出になっているのだから。