その日、私は終電を逃した。
理由はシンプルだ。ぎりぎりまで遊び過ぎた。
というのも、私は今日フリータイムパスを限界まで使い切るために頑張っていた。
……それがいけなかったのだろう。
私は電車で途中まで帰ってきたが、駅で迷ってしまい終電を逃してしまった。
ぎりぎりのスケジュールを組んだ私のミスだ。
電光掲示板に映る本日の営業は終了しましたの文字、それを見ると悲しくなってくる。
私は今日家に帰れないんだなと、思った。
スマホの充電は残り1パーセントほど。
スマホの充電器も今日は持ってきていない。
親に送った終電逃したのラインは既読すらつかない。
私の家の人は基本的に早寝だ。12時を過ぎた今、きっともう寝ているだろう。
歩いて帰りたいところだが、スマホのナビなしだとたぶん迷っちゃうだろう。
それに、歩いて帰ると三時間かかる。それならば、ここでゆっくりしているのがいいだろう。
それで、飽きたらどこかしらのカラオケとかで時間をつぶせばいいのだ。
絶望はない。なんとなくだけど、わくわく感がある。
今の私には何でもできるような万能感がある。
私には注ぐ注ぐ思う事がある。そう、私達はスマホに縛られているんじゃないかと。
スマホの充電はわずか残しておき、外へと飛び出す。
カラオケに行くというのも考えたが、それはなんだか今の時間を無駄にしているような気がする。
それならば、公園に行こうと思った。
その前に念のためにお酒を買って行って。
街灯に照らされる公園。なんだか夜にこんなところに来るのが久しぶりでドキドキする。
一応夜は誘拐が多い。誰もいないからばれにくいのだ。
携帯の充電も心細い今、警戒に越したことはない……と思う。
周りを見渡し、怪しい人がいないのを確認して、座る。
私は早速ブランコを漕ぎ始める。
不思議だ。
夜のきれいな星を眺めながら漕ぐブランコはいつもと違う不思議な感じがする。
……楽しい。
思えば昔はこうしてブランコやシーソーで遊んでいた。
遊ばなくなったのはいったいいつ以来だろう。
大人になるにつれて公園では遊ばなくなっていた。
子どもじゃないのに、ブランコでこぐという行為が恥ずかしくなったのだろうか。
理由なんて今はどうでもいい。楽しいのだから。
コツコツコツ
三十分程度公園で遊んでいると、そのような足音が聞こえてくる。
その時に私は思い出した。
今は深夜。昼ではないという事を。
夜は人波が少ない。危険がいっぱいだ。
私は咄嗟にブランコから立ち上がる。
やっぱり一人で公園にいるなんて不用心だったと今更ながら後悔しながら私はカバンを背負い走っていく。
「あれ」
男が街灯に照らされ、姿が鮮明に映る。
そこにいたのはゼミの同期である宮水俊平君だ。
「あれ、綾川さん?」
どうやら向こうも同じく驚いているようだ。
「なんでここにいるの?」
「それはこっちのセリフだよ」
「俺は、ただ夜眠れなかったから散歩してただけだよ」
散歩。散歩?
ってことは?
「え? 宮水君の家ってここだったの?」
「おう」
気恥ずかしそうに宮水君は答えた。
「ここから徒歩三分のところだ」
「へえ」
宮水君とはそこまで仲の良いわけではない。
だけど、少し気になる男子ではある。
ゼミは基本週に一度しかない。その時にしか基本会えない。
ゼミに時にしか話さない。所謂そんな関係だ。
「ちょっと宮水君が良ければだけど」
しかし、私はちょっと思いついた。
「家に上がらせて」
この、時間を有意義に使うにはいいでしょ。
後から思えばこの選択は深所謂テンションが上がったからかもしれない。
同級生の男子の家に上げただなんて、怖いもの知らずにもほどがある。
「それはなんで?」
宮水君が訊いてくる。当然の疑問だと思う。
ただのクラスメイトでしかない私が、家に上がらせてなんて言ったんだもん。
「私、終電逃したの」
「しゅ、終電?」
「うん。終電。私ね、ラウンドワンで遊んでたら終電逃したんだ」
「ああ、なるほど」
私の言葉の意図を察したらしい彼は、頭を抱える。
そんなに変なことを言ったかな。
「俺が言うのもなんだけど、辞めたほうがいいと思う」
やっぱりそう言われるよね。
私もこれが無茶な話だと分かっている。
だって、私達は異性なんだもん。
「と言いたいところなんだけどな」
そう言ってまた彼は頭をかき出した。
「タクシーとかは使えないのか?」
「うん。お金ないし」
今私の全財産は3000円もない。タクシーで行こうと思ったら5000円はかかるだろうから、きっと足りない。
先ほどお酒を買ったせいでお金がない。
「スマホは?」
「もう一パーセントしかない」
「本当に詰んでいるのか」
私は頷く。
「なら、カラオケは?」
「お金足りない」
ごめん嘘。
カラオケのフリータイムに入るだけのおかねはある。
でも、カラオケで時間をつぶすのは嫌なの。
「仕方ないか。仕方ないよな。別に頼まれたからだし」
そうぶつぶつと呟いた後、
「分かった。家に泊めてやる」
その彼の言葉を聞いた時、私は心の中でガッツポーズを決めた。
理由はシンプルだ。ぎりぎりまで遊び過ぎた。
というのも、私は今日フリータイムパスを限界まで使い切るために頑張っていた。
……それがいけなかったのだろう。
私は電車で途中まで帰ってきたが、駅で迷ってしまい終電を逃してしまった。
ぎりぎりのスケジュールを組んだ私のミスだ。
電光掲示板に映る本日の営業は終了しましたの文字、それを見ると悲しくなってくる。
私は今日家に帰れないんだなと、思った。
スマホの充電は残り1パーセントほど。
スマホの充電器も今日は持ってきていない。
親に送った終電逃したのラインは既読すらつかない。
私の家の人は基本的に早寝だ。12時を過ぎた今、きっともう寝ているだろう。
歩いて帰りたいところだが、スマホのナビなしだとたぶん迷っちゃうだろう。
それに、歩いて帰ると三時間かかる。それならば、ここでゆっくりしているのがいいだろう。
それで、飽きたらどこかしらのカラオケとかで時間をつぶせばいいのだ。
絶望はない。なんとなくだけど、わくわく感がある。
今の私には何でもできるような万能感がある。
私には注ぐ注ぐ思う事がある。そう、私達はスマホに縛られているんじゃないかと。
スマホの充電はわずか残しておき、外へと飛び出す。
カラオケに行くというのも考えたが、それはなんだか今の時間を無駄にしているような気がする。
それならば、公園に行こうと思った。
その前に念のためにお酒を買って行って。
街灯に照らされる公園。なんだか夜にこんなところに来るのが久しぶりでドキドキする。
一応夜は誘拐が多い。誰もいないからばれにくいのだ。
携帯の充電も心細い今、警戒に越したことはない……と思う。
周りを見渡し、怪しい人がいないのを確認して、座る。
私は早速ブランコを漕ぎ始める。
不思議だ。
夜のきれいな星を眺めながら漕ぐブランコはいつもと違う不思議な感じがする。
……楽しい。
思えば昔はこうしてブランコやシーソーで遊んでいた。
遊ばなくなったのはいったいいつ以来だろう。
大人になるにつれて公園では遊ばなくなっていた。
子どもじゃないのに、ブランコでこぐという行為が恥ずかしくなったのだろうか。
理由なんて今はどうでもいい。楽しいのだから。
コツコツコツ
三十分程度公園で遊んでいると、そのような足音が聞こえてくる。
その時に私は思い出した。
今は深夜。昼ではないという事を。
夜は人波が少ない。危険がいっぱいだ。
私は咄嗟にブランコから立ち上がる。
やっぱり一人で公園にいるなんて不用心だったと今更ながら後悔しながら私はカバンを背負い走っていく。
「あれ」
男が街灯に照らされ、姿が鮮明に映る。
そこにいたのはゼミの同期である宮水俊平君だ。
「あれ、綾川さん?」
どうやら向こうも同じく驚いているようだ。
「なんでここにいるの?」
「それはこっちのセリフだよ」
「俺は、ただ夜眠れなかったから散歩してただけだよ」
散歩。散歩?
ってことは?
「え? 宮水君の家ってここだったの?」
「おう」
気恥ずかしそうに宮水君は答えた。
「ここから徒歩三分のところだ」
「へえ」
宮水君とはそこまで仲の良いわけではない。
だけど、少し気になる男子ではある。
ゼミは基本週に一度しかない。その時にしか基本会えない。
ゼミに時にしか話さない。所謂そんな関係だ。
「ちょっと宮水君が良ければだけど」
しかし、私はちょっと思いついた。
「家に上がらせて」
この、時間を有意義に使うにはいいでしょ。
後から思えばこの選択は深所謂テンションが上がったからかもしれない。
同級生の男子の家に上げただなんて、怖いもの知らずにもほどがある。
「それはなんで?」
宮水君が訊いてくる。当然の疑問だと思う。
ただのクラスメイトでしかない私が、家に上がらせてなんて言ったんだもん。
「私、終電逃したの」
「しゅ、終電?」
「うん。終電。私ね、ラウンドワンで遊んでたら終電逃したんだ」
「ああ、なるほど」
私の言葉の意図を察したらしい彼は、頭を抱える。
そんなに変なことを言ったかな。
「俺が言うのもなんだけど、辞めたほうがいいと思う」
やっぱりそう言われるよね。
私もこれが無茶な話だと分かっている。
だって、私達は異性なんだもん。
「と言いたいところなんだけどな」
そう言ってまた彼は頭をかき出した。
「タクシーとかは使えないのか?」
「うん。お金ないし」
今私の全財産は3000円もない。タクシーで行こうと思ったら5000円はかかるだろうから、きっと足りない。
先ほどお酒を買ったせいでお金がない。
「スマホは?」
「もう一パーセントしかない」
「本当に詰んでいるのか」
私は頷く。
「なら、カラオケは?」
「お金足りない」
ごめん嘘。
カラオケのフリータイムに入るだけのおかねはある。
でも、カラオケで時間をつぶすのは嫌なの。
「仕方ないか。仕方ないよな。別に頼まれたからだし」
そうぶつぶつと呟いた後、
「分かった。家に泊めてやる」
その彼の言葉を聞いた時、私は心の中でガッツポーズを決めた。


