千花は蒼刃の言葉を反芻する。技術的には劣っていても、神に舞を捧げたいという願いは誰にも負けないぐらい強いと思っている。

「では、まず皆の舞を見せてもらおう」

 蒼刃の提案に、美琴は目を輝かせた。

「私から舞わせていただきます」

 蒼刃は静かに頷くと、稽古場の上座に腰を下ろした。
 美琴が中央に立つと、稽古場の空気が一変した。立っているだけなのに、美琴本人が輝いているように思える。
 千花はその様子を見ながら、美琴の仕草一つ一つが計算されているのを感じ取った。自分の魅力を最大限に引き出そうとする意図が、手に取るようにわかる。

「――始めてくれ」

 蒼刃の許可を得て、楽師達が曲を奏で始める。それに合わせるように、美琴が舞い始めた。
 その瞬間、稽古場は美一色に染め上げられた。美琴の舞は、まさに天女の舞と呼ぶにふさわしいものだった。
 袖が風になびくように優雅に舞い、足音一つ立てずに床を滑るように移動する。
 扇を開く動作も、閉じる動作も、視線を投げる方向、顔を上げる角度、全てが計算され尽くした美しさ。長い髪が舞の動きに合わせて揺れる。

「素晴らしい……」

 確かに美琴の舞は完璧だった。
 技術的な欠陥は皆無で、見る者を魅了している。千花でさえ、その美しさに心を奪われそうになった。
 舞が終わると、稽古場に静寂が戻った。

「私の舞は、どうでしたか?」