あの時、蒼刃はあっという間に鬘や衣裳を用意してくれた。あれは、どうやって用意したものなのか。
今、ここにいるのは二人だけ。今なら、たずねても許されるだろうか。

「蒼刃様……」
「千花、君に話をしておかねばならないことがある」

　蒼刃の真剣な口調に、千花は背筋を伸ばした。ぴしっと背筋を伸ばして座る。

「実は……私は人間ではない」

　蒼刃の告白に、千花は驚いた。しかし、心のどこかでそれを予感していたような気もした。

「私は軍神だ。この国を守護する使命を負っている」
「軍神様……」

　それなら、蒼刃の圧倒的な存在感にも納得ができる。

「……では、お借りした鬘や小物は」
「私の力で用意した。そのぐらいならば、今の私でも可能だからな」

蒼刃は、話を続けた。
あの時、即座に衣や鬘を用意できたのは、彼の神力で、彼の眷属達を呼び出したものだったからだそうだ。
拙い千花の舞をずっと指導してくれたのも、彼には千花の心が感じ取れたかららしい。

「ずっと前に、神界での争いに敗れ、この世界に封印された。長い間、本来の力を失っていた」

　蒼刃は窓の外を見つめながら続けた。

「しかし、君の舞により、封印の一部が解けた。君だけが、私の封印を完全に解くことができる」
「頼みがある、千花」

　蒼刃は千花の手を取った。