神託の舞人

 蒼刃の声がさらに厳しくなった。

「お前は千花への嫉妬から、数々の嫌がらせを続けてきた。蓮司もまた、お前への盲目的な愛から千花を害そうとした」

 蒼刃は会場の人々に向き直った。

「今朝、美琴と蓮司は結託し千花に暴力を振るった。彼女の髪を切ったのは蓮司だ。」

 会場の怒りはさらに激しくなった。
 美琴は完全に追い詰められた。蒼刃自らが証人となり、自分の罪を暴いたのだ。もはや言い逃れはできない。
 その時、蓮司が会場の後方から前に出てきた。彼の顔は青ざめ、恐怖で震えている。

「申し訳ございませんでした!」

 蓮司は床に膝をついて頭を下げた。

「俺は……俺は美琴様のために……」

 蓮司の告白により、美琴の罪は完全に明らかになった。
 会場の人々の視線は、美琴に冷たく注がれている。これまで久我家の宝として持て囃されていた彼女が、異性を利用して異母姉を虐げていたなんて。
 蒼刃は再び美琴を見据えた。

「お前の行いは、神への冒涜に等しい。お前の舞には気持ちがこもっていないと指導したはずだ」

 美琴は泣き崩れた。

「私は……私は、ただ……」
「劣っていたとしても、他者を虐げていいことにはならない」

 蒼刃の断罪に、美琴はもはや何も言えなかった。
 一方、千花は複雑な心境でその様子を見守っていた。

(美琴……)