神託の舞人

 これまでの拙い舞とは別人のように、流麗で神々しい動きが生まれている。
 足運びは軽やかになり、手の動きは神の意志を表現するかのように美しい。蒼刃から借りた扇を扱う仕草も、まるで風そのものを操っているようだった。
 千花の舞に呼応するかのように、会場に神聖な風が吹き始めた。それは目に見えない神の息吹で、観衆の心を清める力に満ちていた。
 そして、ついにその時が来た。
 天から神聖な光が降り注ぎ、千花と衣装を包み込んだ。その光は温かく、見る者の魂を浄化する力に満ちていた。
 光に包まれた千花は、もはや人間を超越した存在のように見えた。
音楽が終わり、千花は深々と一礼する。
 千花の神聖な舞が終わり、会場が感動の余韻に包まれている中、蒼刃がゆっくりと立ち上がった。
 その瞬間、会場の空気が一変した。蒼刃から発せられる威厳は人間のものとは思えないほど圧倒的で、その場にいた全員が息を呑んだ。

「神託!」

 蒼刃の声が会場に響いた。その声には神聖な力が込められていて、聞く者の魂を震わせるようだった。
 会場にいた全員の視線が蒼刃に集中した。

「久我千花を、日本帝国を守る結界の守護舞人にとする」

 蒼刃の宣言が会場に響いた。
 結界の守護舞人――それは古代から続く最も神聖な役職で、国の安全を舞によって守る重要な存在だった。
 観衆の畏敬の念を帯びた目が、千花に向けられる。