いつもの質素な装いとは打って変わって、千花は息を呑むほど美しい姿だった。蒼刃が用意してくれた古代舞人の衣装は、美琴の衣裳よりも豪華で華やかだった。
　美しく結い上げられた鬘も、まるで本物の髪のように自然で、千花の清楚な美しさを際立たせていた。

「あれが久我家の長女？」
「まるで別人のようですね」
「なんと美しい衣装でしょう」

　観衆の驚きの声が会場に響く。
千花は会場を見回すと、深く息を吸った。蒼刃から借りた衣装を身にまとい、彼の信頼を受けて立つこの舞台。もう迷いはなかった。

（お母様……見ていてください……蒼刃様……あなたのお気持ちを無駄にはいたしません）

　千花は深々と一礼すると、音楽に合わせてゆっくりと舞い始めた。
　その瞬間、奇跡が起こった。
　千花が手を上げた瞬間、古代舞人の衣装が淡く光り始めた。銀糸で織られた鳳凰の模様が、まるで生きているかのように煌めく。
　会場の人々は息を呑んだ。

「衣装が……光っている……」
「これは……神の加護……」

　今まで、長い間見られなかった奇跡。最後に見られたのは百年以上前。
その奇跡が今、起こっていた。
　千花の舞が続くにつれて、衣装の光はさらに強くなっていく。袖が風になびくたびに、銀糸の鳳凰が羽ばたいているように見えた。
　そして、千花の動きも劇的に変化していた。