「実は、素晴らしい知らせがある。高槻公爵から、蒼刃殿と我が家の間に縁を結んではどうかというお話をいただいた」
「本当なの、お父様!」

 父の言葉に、美琴の顔がぱっと明るくなった。反対に、千花はうつむく。
 蒼刃との縁談ならば、間違いなく美琴が嫁ぐことになるのだろう。千花と彼が結ばれるなんてあり得ない。

「もちろんだ。高槻公爵も美琴の美しさと才能を高く評価しておられるようだ。これで久我家の地位も格段に上がる。蒼刃殿ほどの実力者との縁組みは、我が家にとって好機だ」
「美琴、よかったわね。あなたの想いが通じたのよ」
「はい、お母様」
「天詠儀が終わったら、正式に話を進めることになっている」

 父の発表に、千花はさらに衝撃を受けた。
 天詠儀の後。
 もう、そこまで決まっているのか。

「千花も喜んでいるだろう?」

 父が千花に視線を向けた。だが、千花がどう感じるかなんてまったく気にしていないのがわかってしまう。

「は、はい……」

 千花は言葉に詰まった。喜んでいると言うべきなのだろうが、どうしても声が出ない。

「お姉様、私の結婚を祝ってくださらないのですか?」

 美琴が悲しそうな表情で千花を見つめる。言葉が出ないでいると、父が険しい目を向けた。

「美琴、おめでとう」
「ええ、ありがとう。お姉様」