「しかし、君の舞からは、純粋な心が伝わってくる。技術は後から身につけられるが、心を育てるには時間がかかる」

 千花は信じられない思いで蒼刃を見上げた。この人は本当に、自分の中に価値のあるものを見つけてくれるのだろうか。

「これから正しい型を教えよう。君の純粋な心に、正しい技術が加われば、きっと素晴らしい舞になる」

 蒼刃の指導は丁寧で分かりやすかった。
 これまで誰からもまともに教えてもらったことがなかった千花にとって、一つ一つの動作を丁寧に説明してもらえることがどれほど嬉しいことか。
一人、夜中に庭で待っていた時のような自由な感覚。稽古場にいる他の人達のことなんて、完璧に頭から消え失せていた。

「どうだ、少し動きやすくなっただろう?」

 蒼刃の優しい声に、千花は我に返った。確かに先ほどより手足の動きがスムーズになっている。

「はい……ありがとうございます」
「君は諦めずに練習を続けなさい。必ず報われる時が来る」

 その言葉に、胸が温かくなった気がした。これまで誰からも期待されたことがなかったのに、初めて可能性を見出してくれる人が現れた。

(……努力しよう。これからも)

 蒼刃の指導がいつまで受けられるかわからない。でも、それまでの間できる限りの技術を学ぼうと思った。