美琴の声音には、賞賛を確信した余裕があった。蒼刃は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

「技術的には申し分ない。美しく、完璧だ」

 美琴の表情がぱっと明るくなる。最高の舞ができたと、美琴も思っているのだろう。

「だが、足りないものがある」
「……足りない、ですか?」
「君の舞からは、技術への自信は感じられる。だが、神への畏敬の念が伝わってこない」

 蒼刃の指摘は容赦なかった。千花は美琴の顔が見る見るうちに青ざめていくのを見た。

「神に舞を捧げるとは、自分の技術を誇示することではない。己を無にして、ただ神の御心に身を委ねることだ」

 千花は美琴の反応を見守った。
美琴は今まで誰からもこのような指摘を受けたことがなかったのだろう。その動揺が手に取るようにわかる。
父でさえ、美琴にこんな指導はしなかった。

「で、では……どうすればよいのでしょうか?」

 美琴が必死に食い下がるのを見て、千花は胸が痛んだ。美琴なりに、蒼刃から認められたいと願っているのだろう。

「それは自分で見つけることだ。見つけられなければ、君の舞は不完全なままだ」

 蒼刃の答えは冷たく突き放すようなものだった。

「君達自身が気づき、成長しなければ真の舞い手とはなれない」