「だが、だからこそひかれたのかもしれないな。理想を忘れず、果たそうとする芯の強いお前に」
「虹夜様……」
「お前が友のために涙した、そのときに俺の心はお前のものになったのだ。ツガイでなくとも、俺は必ずやお前にひかれただろう」
眞白は信じられない気持ちで彼を見た。
「お前はどうだ? 俺をどう思う?」
「私は……」
「待て待て」
言いかけた眞白を、当の虹夜が止める。
「結論を急ぐな。ゆっくり考えろ。だが、都へは連れていく。いいな?」
「……はい」
眞白が頷くと、虹夜は満足そうな笑みを浮かべ、眞白を抱きしめた。
数日後、眞白は村を出るために虹夜とともに広場にいた。
集まった村人は勢ぞろいして平伏していた。
その先頭には辰彦がいる。隣には母がいて、沙代は縛られていた。
眞白はぼんやりとその光景を眺めた。
今となっては、辰彦が父であることを実感できない。やつれた姿に、かつての威厳は見る影もない。
母は、眞白には陰の薄い存在だった。辰彦と沙代に翻弄され、娘を守ろうとはしなかった女性。
沙代に恨みの目を向けられ、眞白は目を逸らした。彼女はもはや罪人で、裁きを待つばかりだ。
「殿下が直々に沙汰を下されます。心して聞くように」
雨刻が言い、虹夜は無表情で平伏する村人を見下ろした。
「こたびの訪問ではこの村に幾多もの問題があることがわかった」
「大変申し訳なく存じます」
辰彦は顔を上げることなくそう言った。
「虹夜様……」
「お前が友のために涙した、そのときに俺の心はお前のものになったのだ。ツガイでなくとも、俺は必ずやお前にひかれただろう」
眞白は信じられない気持ちで彼を見た。
「お前はどうだ? 俺をどう思う?」
「私は……」
「待て待て」
言いかけた眞白を、当の虹夜が止める。
「結論を急ぐな。ゆっくり考えろ。だが、都へは連れていく。いいな?」
「……はい」
眞白が頷くと、虹夜は満足そうな笑みを浮かべ、眞白を抱きしめた。
数日後、眞白は村を出るために虹夜とともに広場にいた。
集まった村人は勢ぞろいして平伏していた。
その先頭には辰彦がいる。隣には母がいて、沙代は縛られていた。
眞白はぼんやりとその光景を眺めた。
今となっては、辰彦が父であることを実感できない。やつれた姿に、かつての威厳は見る影もない。
母は、眞白には陰の薄い存在だった。辰彦と沙代に翻弄され、娘を守ろうとはしなかった女性。
沙代に恨みの目を向けられ、眞白は目を逸らした。彼女はもはや罪人で、裁きを待つばかりだ。
「殿下が直々に沙汰を下されます。心して聞くように」
雨刻が言い、虹夜は無表情で平伏する村人を見下ろした。
「こたびの訪問ではこの村に幾多もの問題があることがわかった」
「大変申し訳なく存じます」
辰彦は顔を上げることなくそう言った。



