金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「……お前は優しいな。聞いたぞ、村中から虐げられていたのだろう」
 慈しむ眼差しに、眞白は目をそらした。
「みんな怖かっただろうな、と思っただけです」
「それを優しいと言わずしてなんと言う。お前ほどの清らかな人間は見たことがない」
 虹夜がそっと眞白の頭をなでる。その優しい感触に、眞白はぎゅっと目を閉じた。
「……私、本当は醜い人間です」
 突然の告白に、虹夜は撫でる手を止めて続きを待った。
「みんな、嫌いです。私を虐める人はみんな。バチが当たれって思ってました。だけど、おばあ様が……祖母が、そういうことを思ってはいけないよ、許さないとバチがあたるよって言ってました。だから、思わないように頑張ってました」
 眞白は虹夜が止める間もなく起き上がり、畳に座り直して彼の前で手をついて頭を下げた。「だけど、憎たらしい気持ちはずっとありました。今でもそうです。昨夜はみんなのためじゃなく、虹夜様のために舞いました。心の汚れた私はあなた様の嫁にふわしくありません。ツガイというのもなにかの間違いです。今まで黙っていてすみません。どうか、罰してください」
 どんな罵声も覚悟したその耳に、ふっと息を吐くような苦笑が聞こえた。
「お前はいい子だな」
 小さな子を撫でるように、頭を撫でる手があった。優しくて、愛おし気なその感触に、眞白の目に涙が浮かぶ。
「自分を責める必要はない。誰とも接しなかったゆえに、祖母の教えが絶対になってしまったのだな。お前は悪くない。つらく当たられたら憎く思うのは人として自然なことだ」
 憐れむ声もまた優しかった。
「憎まず許す、それは人の理想だろう。だが、それに囚われる必要はない。顔を上げよ」
 優しい声とともに手を重ねられ、眞白は顔を上げた。
 そこには慈愛に満ちた虹夜の笑顔がある。