金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

 だけど。
 眞白は目を森に向ける。
 村だけでなく森も燃え始めている。コウヤが眠る森を焼け野原になどしたくない。
 虹夜様のために。コウヤのために。
 眞白は最初の構えをとった。
 かつて聞いた楽の音を思い出しながら、心をこめて舞う。
 お願い、落ち着いて。
 願いながら、眞白は舞を舞う。
 一曲分を終えたら、また最初から舞った。
 どうか、お願い。私は無事です。だから鎮まって。
 深く、深く、舞に集中する。
 そのうち、急に体が軽くなった。
 ああ、舞いやすい。
 眞白はかろやかに舞う。
 その体からは、銀の光が発せられていた。
 光は糸のように細く天に伸び、しゅるしゅると金の龍に巻き付く。
 金の龍は抗うように暴れるが、銀の糸は切れることがない。
 糸は龍を包み込み、繭となった。最後に眞白の体から銀の龍が現れ、繭をそっと抱え込む。
「ああ、銀の龍だ」
「銀の龍が現れた!」
 村人は空を仰ぎ、膝をついた。銀の龍に、眞白に、ただひれ伏して祈りを捧げる。
 ふいに、龍が掻き消えた。銀の粉が降り注ぎ、燃えていた家々や森が火勢を弱め、やがては鎮火した。