コウヤが抗議するようにケーン! と鳴くが、彼女はそれを鼻で笑った。
「沙代様は銀の龍に変化できる貴重なお方」
「都のお使者は沙代様を嫁に迎えに来るのよね」
「きっと、金の龍の暴走を舞で癒した銀龍姫の生まれ変わりなのよ」
 大ムカデ討伐の際、金の龍は力の強大さゆえに暴走し、ひとりの娘が舞を舞って鎮めた。彼女は銀の龍へと変化して銀龍姫と呼ばれ、金の龍の妃となって幸せに暮らしたという。
眞白と沙代が習ったのはその舞だと伝わっている。村の結婚式では新しい夫婦の幸せのために、この舞が舞われる。
「龍になれるなんて嘘つきの出来損ないとは大違い」
 三人のひとりがそう言って締め、大きな声で笑う。
「嘘は……ついてません」
 か細い声で反論すると、彼女らはまた笑った。
「だったら龍になってみなさいよ」
「ちびっちゃい白い龍になったんだっけ?」
「一度だけできたって、そんな嘘ついて!」
 眞白は黙ってうつむく。
 子どものころ、なぜか一度だけ、白い龍になれたことがあった。だが、それはトカゲのように小さくて、みなの思うようなものではなかった。そのときに髪は白く、目は銀色に変色し、戻っていない。
 まだ子どもだからね、そのうち立派な龍になれるよ、と祖母は笑った。
だが、それ以来は龍になることはなく、だから嘘つきだと言われている。
「本当に嘘つきね。子守りをかわるって言ったくせに弟を放置したじゃない」
「私も! 水汲みを代わるって言ったのに、やってなかったわ!」
 眞白は黙ってうつむく。