金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「天罰よ……」
 込み上げるようにして、言葉がもれていた。
「天罰よ。みんながやってきたことが返って来たのよ!」
 泣きそうになりながら、眞白は言っていた。一度口にしたら、あふれたそれは止まらない。
「心当たりがないとは言わせないわ!」
 眞白の叫びに、一瞬、彼らはひるんだ。
 だが、今まで虐げて来た眞白の反論など彼らには届かない。むしろ、今まで大人しく虐げられてきた彼女の反逆は彼らの神経を逆なでした。
「お前なんかが逆らうのか!」
「今までお前が村にいるのを許してやってきたのに!」
 轟々と非難がわき起こり、今にも襲い掛からんとしたとき。
 雨刻は銃声を轟かせ、村人を我に返らせた。
「皇子のツガイたる眞白様に不届きは許されません」
 村人はぐっと押し黙り、やがてひとりが吐き捨てた。
「皇子の嫁に選ばれたとたんに偉そうにしやがって」
 眞白は歯を食いしばり、胸を押さえた。
 おばあ様。私はこうまでして、まだ耐えて許さなくてはならないのですか。
 私はもう充分にがんばった……充分に許して来た。そうだよね、コウヤ。
 亡き友に、心の中で語りかけたときだった。
 耳に、赤ん坊の泣き声が届いた。
 その子を抱いた母は、村人をかきわけて前に出る。
「お願いです、眞白様。私たちは確かに今まで、あなたを虐げてきました。だけど、この子に罪はありません。私はどうなってもかまいません。どうか、この子には天罰を与えないでください」
 眞白は顔をしかめた。