金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「なんで……私がこんな目に……」
「やめて!」
 眞白は両腕を広げて、それを止めた。
「なんで止めるんだ!」
「眞白のくせに!」
 石は眞白にも遠慮なく飛んでくる。
「やめろ、この方は皇子の花嫁であらせられるぞ」
 雨刻の叫びに、一瞬、礫の雨が止んだ。昨夜のうちに辰彦からの通達があったことを思い出したのだ。
 が、すぐに野次が飛ぶ。
「だったらあれを止めろ!」
「それは……」
 眞白は返事ができなかった。
 自分は銀の龍にはなれないし、姉のようには舞を習ってはいない。
「ツガイなら止められるんだろ!」
「やっぱりお前は嘘つきなんだな!」
 なんでこんなことを言われるんだろう。
 眞白は愕然として、ただ立ちすくんだ。
 言いたいことはたくさんある。
 沙代の仕打ちがつらかった。
 だけど、彼女だけじゃない。ほかの、沙代を責めた彼ら彼女らだって、眞白につらく当たって来た。
 それでも彼らの仕打ちを棚上げにして、村を助けようと沙代を奮い立たせ、頑張って来た。
 なのに、彼らは一顧だにせず眞白を罵っている。
 こんな人たちを助ける意味はあるのだろうか。
 眞白は荒れ狂う黄金の龍を見る。