金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「な、なんで助けてくれないのよ!」
「お姉様。お願いします」
 言われて、沙代は泣きそうな顔で金の龍を見た。
 それから必死に集中しようとする。
 もやもやと空中に銀のもやが現れる。が、それは形をとることなく霧散した。
「だめ、怖くて集中できない」
 沙代は座りこみ、ぐずぐずと泣き始めた。
「どうしてよ。どうして私がこんな目に遭うのよ!」
 わあわあと声を出して泣きわめく様に、雨刻はため息をこぼして銃を戻した。
「未熟な幻術では限界がありますね」
 雨刻が言ったときだった。
「幻術ってどういうことだ?」
 村人のひとりが言い、沙代をにらみつける。
「今まで見て来た銀の龍は幻だったの?」
「だったら金の龍を鎮めるなんてできないじゃないか!」
 罵声が響き、沙代は恐れにおののいた。
「嘘つき!」
 どこからともなく声が飛び、石が飛んできた。
「嘘つき! 銀の龍になれるなんて!」
「いつも威張ってみんなを殴って、なのにこんなときに助けてくれないなんて!」
「騙された!」
 石だけでなく、落ちていた木っ端や砂が投げられ、沙代は体を丸めてそれを受ける。