金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う


「ああ、沙代様だ」
「沙代様が龍鎮めの舞をなさるぞ」
 村人の中から期待の声が上がる。
 笛の音もなにもない状態で、沙代は舞を始めた。
 村人たちは固唾を飲んで見守っている。
 龍はあいかわらず咆哮をあげ、雷が夜空を照らし、広場の近くの家に落ちた。
 沙代は悲鳴を上げて座り込んだ。眞白は駆け寄って背に手を添える。
「お姉様、しっかりして!」
「もう無理! なによ、こんなの!」
 羽織を脱いで地面に投げ捨て、天冠を投げ捨てる。
「だったら、銀の龍を出してください」
 眞白はすがるように言い、駆け付けた雨刻がそれに頷いた。
「なるほど、銀の龍を見せれば……しかし」
 雨刻は言葉を切る。
 虹夜には沙代の幻術は見破られている。ここで銀の龍の幻を出したところで騙されてくれるかどうか。
「やってみなくてはわかりません」
 眞白の言葉に、雨刻は頷く。
「幻を出してください」
「そ、そんなこと言われても」
 沙代が拒否をして、その足は逃げようとじりじりと動く。
「断れば、撃ちますよ」
 雨刻は腰から銃を抜き、沙代に向けた。
「効かなくてもかまいません。やってください。やってくれたら撃ちません」
 沙代は震え、眞白を見た。