金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「眞白様、よろしいので?」
 眞白は首を傾げ、雨刻を見た。
「本当に殿下がお心変わりなされても?」
 虹夜の甘い微笑が思い出され、胸がずきっと痛んだ。
 もし本当にそうなれば、あの笑顔をなくしてしまう。幸せになる覚悟をせよ、と言ってくれた彼を。
 だとしても。
 眞白はキッと雨刻を見た。
 だとしても、この窮状を見ていられない。誰かが死んでからでは遅いのだ。
「かまいません」
「わかりました。用意を」
「ええ!」
 沙代は目を輝かせて答えた。
 彼女の準備の間、雨刻たちは龍の気をそらせるために狙いを外して銃を撃つ。
 龍はうるさいハエを払うかのように腕をなぎ、雷が空を灼いた。一部は森に落ちて、木々が燃え始める。
 眞白は沙代の着替えを手伝い、羽織を着せ、天冠を沙代の頭に載せて紐を結んだ。
 しずしずと歩く沙代の手を引き、村の広場へ導く。
 いつしか村の人々は彼女らを見つめていた。
 堂々と歩いていた沙代は、だが金の龍を見て顔を歪めた。足を止め、がくがくと震える。
「お姉様、しっかり。私より美しく舞えるのですよね」
 沙代はむっとして眞白を睨み返す。
「当然よ!」
「では、お願いします」
 言って、眞白は下がる。