金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う


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 眞白が沙代を探しに出たしばらくあと。
 沙代は龍の末裔を名乗る男たちを連れて村に戻り、虹夜の滞在先である自宅に彼らを連れて来た。
「こんなところに村があったとは」
「ぜんぜん見つからなかったなあ」
 男たちは感心したように声を上げる。
 小汚い男たちを家の中に入れたくなくて、沙代は庭に回った。
「どうしてこちらから?」
 問い掛けに、沙代はにっこりと笑う。
「こちらのほうが近いのよ」
「本当に優しい方だ」
「天女のようだ」
 口々にのぼる誉め言葉に、沙代は気分をよくして案内する。
 縁側には雨刻がいて、その下の庭にはふたりの護衛がいる。
「待て。その者たちはなんだ」
 雨刻の問いに、沙代は顔をしかめる。自分にこんな乱暴な口を聞くなんて、不快だ。
「龍の末裔で、皇子にお願いがあるっていうのよ」
顔をしかめる雨刻の前で、男たちは平伏した。
「どうかお目通りを。お願いしたいことがあるのです」
「申してみよ」
「皇子に直接、奏上させていただきたい」
「ここに皇子はおられぬ」
 雨刻の言葉に、沙代はむっとした。
「嘘よ、ここにいるって知ってるんだから!」
 沙代の言葉に、雨刻は舌打ちする。皇子を守る嘘だと気付きもせず、口軽く語るとは。