どれもこれも、すべて眞白のせいだ。
目に憎悪をたぎらせ立ち上がる。
沙代は使用人を使って手に入れた懐中時計を取り出した。
美しい時計だ。蓋に刻まれた龍は流麗で、その瞳はダイヤモンドなのだろう、きらきらと輝いている。
蓋を開けるとガラスのはまった文字盤が見えた。西洋の数字で、読み方は沙代にはわからない。
沙代はそれを地面に投げつけ、踏みつけた。なんどもなんども踏みつけ、壊れてから満足げな笑みを浮かべる。
「壊れた時計を見れば、皇子様も眞白を嫌いになるわよね」
与えたものをすぐに壊したとなれば、嫁にすることを取り消し、眞白の不義理を正すために申し出た自分を見直して嫁にするだろう。
沙代はそういう算段を立てた。甘やかされて育った沙代は、そんな稚拙な策が通用するわけない、という客観的な視点を持たなかった。いつでも自分が考えたことが最強であり、周囲は命令を聞く存在だった。
壊した懐中時計を拾おうとして、割れたガラスで手を切った。
「いたっ!」
血がぽたぽたと懐中時計に垂れる。
もう! ケガまでさせられてさんざんだわ。
流れた血のわりには傷口は小さかった。ハンカチを取り出し、傷口を押さえる。しばらくして、すぐに血は止まった。
壊れて分離した蓋と本体をハンカチで包んでたもとに入れたときだった。
「もし」
かけられた声に、沙代は振り返ってぎろっとにらむ。
目に憎悪をたぎらせ立ち上がる。
沙代は使用人を使って手に入れた懐中時計を取り出した。
美しい時計だ。蓋に刻まれた龍は流麗で、その瞳はダイヤモンドなのだろう、きらきらと輝いている。
蓋を開けるとガラスのはまった文字盤が見えた。西洋の数字で、読み方は沙代にはわからない。
沙代はそれを地面に投げつけ、踏みつけた。なんどもなんども踏みつけ、壊れてから満足げな笑みを浮かべる。
「壊れた時計を見れば、皇子様も眞白を嫌いになるわよね」
与えたものをすぐに壊したとなれば、嫁にすることを取り消し、眞白の不義理を正すために申し出た自分を見直して嫁にするだろう。
沙代はそういう算段を立てた。甘やかされて育った沙代は、そんな稚拙な策が通用するわけない、という客観的な視点を持たなかった。いつでも自分が考えたことが最強であり、周囲は命令を聞く存在だった。
壊した懐中時計を拾おうとして、割れたガラスで手を切った。
「いたっ!」
血がぽたぽたと懐中時計に垂れる。
もう! ケガまでさせられてさんざんだわ。
流れた血のわりには傷口は小さかった。ハンカチを取り出し、傷口を押さえる。しばらくして、すぐに血は止まった。
壊れて分離した蓋と本体をハンカチで包んでたもとに入れたときだった。
「もし」
かけられた声に、沙代は振り返ってぎろっとにらむ。



