金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「探しに行ってきます」
「ええ!?」
 驚く使用人に背を向け、沙代の部屋に向かった。
障子は開いていた。縁側から覗いた部屋は荒れていて、驚いて中に入る。物が畳に投げ出され、奥のふすまは切り裂かれていた。
「なにがあったの……?」
「眞白様」
 声をかけられ、眞白は振り返る。女性の使用人がそこに立っていた。
「沙代様ですが、森へ行くのを見た者がいたようですよ」
 わざわざ知らせに来てくれたようだ。だが、それで安堵はできない。
 森へ行ったのは、なにかがあったから?
 眞白は駆け出した。

***

腹立ちが治まらない沙代は、いてもたってもいられず森に来ていた。いなくなった、と村人が大騒ぎすればいいと思ったのだ。
 彼女は気付いていなかった。
 村人の関心はすでに眞白にあり、沙代は眼中にない。
 森をさまよううち、いつまでたっても自分を探す声がしないことにいら立った。
 どうしてなの。私は皇子の嫁になるのに。
 思ってから、眞白が選ばれたことを思い出す。
「なんなの、もう!」
 近くにあった木を殴ると、自分の手が痛くなった。
「うう……」
 手を押さえてしゃがみこむ。