金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「俺は明日にはここを発つ。だからお前の出発も明日にしよう。うん、それがいい」
「え……それは……」
「ダメとは言わせないぞ」
「虹夜様」
 縁側から声がかかり、虹夜は顔をしかめた。
「また雨刻か。なんだ」
「あまり無理を言うものではありません」
 雨刻はいつ呼ばれてもいいように縁側に待機しており、見かねて声をかけたのだろう。
「彼女と離れるなんて俺が無理だ」
「狭量と思われてもよろしいのですか」
 言われて、う、と虹夜が言葉に詰まる。
「眞白様も、こうなられてはお早くお覚悟をお決め下さい。一週間でよろしいですか」
「ダメだ。明日にしろ」
 眞白ではなく虹夜が反論する。
「では五日で」
「二日だ」
「……では三日で」
「三日……なんと長いことか」
 虹夜がこぼし、眞白を見る。
 三日。だとしてもそれは、行くかどうかを悩む時間ではなく、覚悟を決めるための時間だ。
「どうかお願いします」
 眞白の言葉に、夜虹はため息をついた。
「我が嫁の頼みだ、仕方あるまい」
「では、そのように手配して参ります」
 雨刻が下がり、眞白は虹夜から体を離して居ずまいを正した。