金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「あんたは偽物なの! 私が本物なの!」
 なんどもぶって罰を与えた。
 そのせいか、眞白はなにも言わなくなった。
 その後、眞白は村中で嘘つきと呼ばれ始めた。もちろんそれを広めたのは沙代だ。
 誰も気付いていないが、沙代はなんども眞白の幻を見せて村人を騙した。子守りをしてあげると言って子どもをあずかって放置したり。重労働である水汲みを代わってあげると言ってやらなかったり。
 だから眞白はみごとな嘘つきとして認知されるに至ったのだ。
 眞白が嘘つきになってからは、沙代を両親が、眞白の世話を祖父母が見た。
 夕方、沙代は我慢できずに部屋を出た。
 辰彦の言いつけた謹慎なんて、そもそも守る必要なんてないに違いなかった。誰かをぶって、気晴らしをしたい。
「ねえ、聞いた?」
 通りすがりに、女性の使用人が別の使用人に話しかけるのを見かけた。
「なに?」
「眞白様、皇子様から懐中時計を頂いたんですって」
「なによそれ!」
 沙代が怒鳴ると、彼女らはびくっと身を震わせた。
「沙代様……」
「どうしてこちらに」
「そんなことより! 眞白がなんで時計をもらってるのよ!」
「それは、私には……」
 しどもどろの使用人を、沙代はぎいっと睨みつける。ふたりは恐怖にすくみあがった。
「それ、盗ってきて」
「は?」
「え?」
 使用人たちは驚きの声をあげる。