「まずは御手を離して差し上げてください」
「嫌がってないぞ」
「嫌がることすらできないほど困惑しておられますよ」
「そうなのか?」
聞かれて、眞白はおずおずと頷いた。
「嫌じゃないんだな」
虹夜は体勢を変えてより密着し、離さない。眞白は現実を受け入れられなくて、目を白黒させた。自分の背に彼の体温がある。後ろからがっしりと抱きしめられ、肩には頭をもたせかけられた。逃がすまい、という気迫を感じて眞白は身動きがとれない。夏のせいもあり、じわりと汗が浮かぶ。
「まったく……」
雨刻はあきらめたように顔をしかめた。
「朝餉をお断りになったとか」
「昨日ほどではないが穢れが入っていたからな……そうだ」
虹夜は顔を輝かせて眞白を見た。
「眞白、俺に料理を作ってくれ」
「私が?」
「ここの家人が用意したものは食えなかった。せっかくお前がいるのだから、頼みたい」
「ですが、私はほとんど料理をしたことがなくて……」
「なんでもいい。お前が作れば極上であろう。清らかな心で作られたものは清らかな味がするものだ」
虹夜に期待に満ちた目で見られ、眞白は戸惑う。
「よろしくお願いします」
「眞白、やってくれ」
雨刻と辰彦に言われ、眞白は頷いた。少なくとも今の状況からは逃れられそうだ。
「嫌がってないぞ」
「嫌がることすらできないほど困惑しておられますよ」
「そうなのか?」
聞かれて、眞白はおずおずと頷いた。
「嫌じゃないんだな」
虹夜は体勢を変えてより密着し、離さない。眞白は現実を受け入れられなくて、目を白黒させた。自分の背に彼の体温がある。後ろからがっしりと抱きしめられ、肩には頭をもたせかけられた。逃がすまい、という気迫を感じて眞白は身動きがとれない。夏のせいもあり、じわりと汗が浮かぶ。
「まったく……」
雨刻はあきらめたように顔をしかめた。
「朝餉をお断りになったとか」
「昨日ほどではないが穢れが入っていたからな……そうだ」
虹夜は顔を輝かせて眞白を見た。
「眞白、俺に料理を作ってくれ」
「私が?」
「ここの家人が用意したものは食えなかった。せっかくお前がいるのだから、頼みたい」
「ですが、私はほとんど料理をしたことがなくて……」
「なんでもいい。お前が作れば極上であろう。清らかな心で作られたものは清らかな味がするものだ」
虹夜に期待に満ちた目で見られ、眞白は戸惑う。
「よろしくお願いします」
「眞白、やってくれ」
雨刻と辰彦に言われ、眞白は頷いた。少なくとも今の状況からは逃れられそうだ。



