金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

 彼に手招きされて近寄ると、ぎゅっと抱きしめられた。
「え!?」
「ずっと会いたかった。出会う前からずっと焦がれていた」
「あ、あの、あの!」
 眞白は呆然として、言葉にならない。
「絶対に離さない。わかるか、この気持ちが」
「え……」
 正直、わからない。
 見目麗しい彼にときめかないと言えば嘘になる。が、昨夜会ったばかりで、彼のことなどなにも知らない。
 そもそも、恋を知らない。虐げられてばかりいた眞白はいかに身を守るかが優先で、恋をする余裕などなかった。
 なのに彼の気持ちなど、わかるはずがない。
「ああ、わかる。俺の気持ちがいかに深いかお前にはわかるまい、ということがわかる」
 ひとりで納得し、虹夜はさらに眞白を強く抱きしめる。
「く、くるし……」
「すまない」
 虹夜は慌てて手を緩める。が、離してはくれない。
「殿下、よろしゅうございますか」
「よくない」
「入りますよ」
 虹夜の言葉を無視し、雨刻が入って来た。後ろには辰彦が控えている。
「眞白様に無体をおっしゃっておられませんね?」
「まったくだ」
 眞白を離さないまま、虹夜は言う。