金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「それだけじゃないわ! 自分は龍になれるって嘘をつくの!」
「ほう……?」
 虹夜の目が細まり、眞白は体を小さくした。
「小さい頃に一度だけ、龍になったことがあったんです。お父様もご存じです。でも、小さくて、真っ白で、こんなの龍として認められないって言われたんです」
「そうなのか?」
 尋ねる虹夜に、辰彦は頷く。
「一度だけですが、私も見ました」
「それこそ幻術よ!」
「みっともないからもうやめろ」
 うんざりと虹夜が言い、沙代は悔し気に口を閉じる。
「眞白には龍の力があるのだろう。だから見破った。お前の幻術もまた龍の力のであろうが、今後は悪用を許さん。自粛せよ」
 虹夜はぴしゃりと言い放ち、沙代は絶句した。このような強烈な拒絶は生まれて初めてだ。
「だいたい、あの舞はなんだ。腑抜けて気持ちの悪い動き、こめられたのは邪心ばかり、無様で醜悪、龍を慰めるなどできようはずもない」
 不快さを全開に、虹夜は言い募る。
「申しわけございません! 我らの教育が行き届かず……」
「まったくだ。我が嫁の有り様を見ればよくわかる」
 両親はただただ恐縮して身を竦めた。
「今までのことはこれから詮議(せんぎ)する。まずは眞白への態度を改めよ。我が妻への侮辱は許さん。ゆめゆめおろそかにすることのなきよう、すぐさま村中に通達せよ」
「かしこまりました!」
 辰彦と母が平伏し、沙代は不貞腐れる。が、その頭をぐいっと辰彦に抑えられ、無理矢理に平伏させられた。