金の龍皇子は銀龍の娘を花嫁に乞う

「ああ、すまない。お前は傷心であったな。だが、今宵の邂逅は僥倖というほかない。眞白。こちらへ来い」
「ですが、汚れておりまして……」
「そうか」
 虹夜は自らが縁側へ行って眞白の手をとる。
「気が利かず、すまない。まずは湯を。それから着物だな」
 言って、彼は辰彦を見る。
「え、あ」
 辰彦は急な展開に戸惑い、まともに返事もできない。
「恐れながら!」
 沙代はむっとして口をはさむ。
「その者は嫁にふさわしくありません! 銀の龍ではないし、私が銀の龍じゃないって嘘を言うんです!」
「それは真であるから、仕方があるまい」
 虹夜の言葉に、沙代のみならず雨刻以外の全員が驚いた。
(たばか)れると思ったか。お前がつたない幻術で銀の龍を見せていたこと、とうに気付いておる。お前の矜持もあろうから折を見て注意するにとどめようと黙っていたが、愚かな者よ」
 虹夜の声にはあきらかな侮蔑があった。
「幻術だと!?」
 辰彦が驚きの声をあげる。
「違います、本当に龍に……」
「まだ言うか!」
 雨刻が怒鳴り、沙代はビクッと震えた。
「眞白は見破っていたのだろう。だから銀の龍ではないと言った。だが、幻術に惑わされたお前たちは眞白を嘘つきと言った」