月曜日の朝。
結衣が登校すると、教室の後ろで乃々香が待っていた。
「少しだけ、いい?」
結衣は静かにうなずき、ふたりで中庭へ向かった。
春の風が、制服の袖を揺らしていた。
「この前は、ごめんね。いきなりあんなふうに言って」
結衣は、首を横にふった。
「謝るのは、私のほうかも。悠真くんとのこと……知らなかったから」
乃々香は微笑んだ。でも、それはどこか大人びた笑顔だった。
「私ね、ずっと、悠真は私のことを選んでくれるって思ってた。思い込みって、こわいね」
風が、ふたりの間を通り抜けていく。
「でも、結衣ちゃんを見て、わかったの。悠真が今、一緒にいたいと思ってるのは……きっと、あなただ」
その言葉に、胸が痛んだ。
「私も、簡単には忘れられないけど……でも、諦めるっていうより、受け入れたいの。悠真が選んだ気持ちを」
乃々香の目には、もう涙はなかった。
強く、やさしい人だと、思った。
「ありがとう……乃々香さん」
「いいの。私も、ちゃんと前を向くから」
ふたりの距離が、少しだけ近づいたように思えた。
結衣が登校すると、教室の後ろで乃々香が待っていた。
「少しだけ、いい?」
結衣は静かにうなずき、ふたりで中庭へ向かった。
春の風が、制服の袖を揺らしていた。
「この前は、ごめんね。いきなりあんなふうに言って」
結衣は、首を横にふった。
「謝るのは、私のほうかも。悠真くんとのこと……知らなかったから」
乃々香は微笑んだ。でも、それはどこか大人びた笑顔だった。
「私ね、ずっと、悠真は私のことを選んでくれるって思ってた。思い込みって、こわいね」
風が、ふたりの間を通り抜けていく。
「でも、結衣ちゃんを見て、わかったの。悠真が今、一緒にいたいと思ってるのは……きっと、あなただ」
その言葉に、胸が痛んだ。
「私も、簡単には忘れられないけど……でも、諦めるっていうより、受け入れたいの。悠真が選んだ気持ちを」
乃々香の目には、もう涙はなかった。
強く、やさしい人だと、思った。
「ありがとう……乃々香さん」
「いいの。私も、ちゃんと前を向くから」
ふたりの距離が、少しだけ近づいたように思えた。


