翌日の放課後、音楽室に入った悠真は、どこかぎこちない空気をまとっていた。

「昨日、乃々香から……告白された」

ピアノの前で指を止めていた結衣は、そっと顔を上げる。

「……そう」

「びっくりした。でも、ずっと一緒にいたし、気づいてなかったわけじゃない。なのに――俺はずるいなって思った」

「悠真くんは、まっすぐな人だよ。ちゃんと、向き合おうとしてる」

「……結衣」

ふたりの距離は、わずかに近づく。

「俺……まだ答えは出せない。でも、君といる時間は、なくしたくない」

結衣は黙って、再び鍵盤に手を置いた。
奏でる旋律は、どこか切なく、そして温かかった。

恋が「始まってしまった」放課後――
三人の想いが、静かに重なりはじめていた。