昼休み。乃々香は、勇気を振り絞って結衣に声をかけた。

「ねえ、結衣ちゃん。悠真と、放課後よく一緒にいるんだって?」

「……うん。音楽室で、少しだけ」

「ふーん……そうなんだ」

笑ってみせる。けれどその笑顔の奥に、言葉にできない痛みがある。

「悠真ね、昔から誰にでも優しいんだ。でもね、私、あいつのこと――」

言葉が止まる。言ってしまえば、すべてが変わってしまう気がして。
けれどその夜、乃々香はスマホの画面を見つめながら、指を震わせてメッセージを送った。

「悠真。私ね、あんたのことが好き。ずっと、ずっと前から。」

送信ボタンを押したあと、画面が滲んで見えなくなった。