高校生活、最後の日が近づいていた。

教室には、なんとも言えない空気が流れていた。
終わることへの寂しさと、始まる何かへの期待と。

悠真と乃々香、そして結衣。
それぞれの道が、別れを予感させていた。

放課後、旧音楽室にふたりで入った。

「ここで、君と出会ってよかった」

悠真が、そう言った。

「ここでなかったら、きっと君のこと、見逃してた」

「私も、同じ気持ち」

ふたりは、思い出の曲をもう一度、静かに奏でた。

ピアノの旋律が、すべてを語ってくれるようで。
そして最後に、悠真が呟いた。

「卒業しても、……君を忘れない。絶対に」

その言葉は、約束のように、結衣の胸に残った。