ある雪の降る日、悠真がぽつりと口にした。

「結衣……俺、音大に行くって決めた」

「うん。知ってた」

「東京の学校だよ。ここからは……遠い」

そう言って、彼は下を向いた。

「ほんとは……離れたくない。でも、夢を追いたい気持ちにも、嘘つきたくなかった」

結衣は、ゆっくりとうなずいた。

「……私も、まだ何になるか決まってないけど、ちゃんと考えたいって思ってる」

静かな沈黙のあと、ふたりは見つめ合った。

「……もし、離れても」

「うん」

「好きでい続けられるなら、それってすごいことだよね」

そう言って、ふたりは、指先をそっと絡めた。

未来のことはわからない。
だけど、いまこの瞬間だけは、確かに、心がつながっていた。