舞台のクライマックス。

悠真の指が、鍵盤の上を駆ける。
それは、春の訪れを告げるような、やさしい音だった。

そして、マイクを握った結衣が、小さく息を吸う。

(届いて、私の声――)

歌詞は、ふたりで書いたもの。

出会い、戸惑い、触れ合って、想い合った日々を、旋律に乗せて。

やがて、音楽が終わると同時に、会場から温かな拍手が起こった。

幕が下りると、悠真が笑って言った。

「……すごくよかった。結衣、ほんとにがんばったな」

「……ううん。悠真がそばにいてくれたから、歌えたの」

舞台裏の片隅で、ふたりはそっと手をつないだ。

それだけで、心が満たされていく。

この日、ふたりの恋は――はっきりと、ひとつになった。