再び始まった、放課後の音楽室。

悠真はいつものように、ピアノの前に座り、結衣はその横に座っていた。

「……今日の曲、ちょっと自信あるんだ」

「そうなの?」

「結衣のことを、思って作った」

その言葉に、鼓動が早くなる。

悠真の指が、鍵盤に触れる。

静かで、あたたかくて、やさしくて――どこか、春の風みたいな旋律だった。

音に包まれながら、結衣は思った。

この時間が、ずっと続いてくれたらいいのに。

曲が終わったとき、悠真が言った。

「俺、やっぱり……君が好きだ」

その言葉が、胸の奥にすとんと落ちた。

「……私も、好き」

そう応えた瞬間、ふたりの世界が、すこしだけ変わった。

音楽室の窓からは、夕日がやさしくふたりを照らしていた。

恋が「始まってしまった」あの日から、
ようやくふたりは、同じ気持ちを言葉にできたのだった。