朝起きたら、枕元に日記帳が置いてあった。
謎のスマホも置いてあった。開くと、きょうは四月十四日の、月曜日らしい。
日記帳を読んでみると、日記はもちろん、紙が貼ってあって、そこにわたしが病気だとかいろいろ書いてあった。
けど、不思議なことに、四月十三日の日記がない。
凪くんってひとと出かける予定だった日みたいだけど……
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「うん。きょうは月曜日だから学校?」
「ええ」
じゃあ準備しよ。一日ごとに記憶が消えると、月曜日の憂鬱感はほぼない。朝ごはん食べて、支度して。これで行けるかな?
「ピンポーン」
ん、日記に書いてあった花梨ちゃんか。
「ののちゃーん!」
「はーい!今行きまーす!」
「おはよ〜!」
「おはよ!」
「きのうのお出かけどうだった!?」
「それがね、謎に日記が書いてなくて……」
「え〜!?なんでかな……」
学校に着いたら、凪くんが席にやってきて、ちょっと小さな声で、
「きょうは、お付き合い二日目だね……!」
え、え……?「お付き合い」?
過去の日記にはそんなことひとことも書いてなかった。
若干好意を抱いていたっぽいことは書いてあったけど、急にそこまで進展されると困る。
混乱しすぎて挙動不審になってることは、誰が見ても明らかだった。
もはや、わたしに理性はなかった。
「え、えっと……お付き合いしただなんて日記に書いてなかったし……勝手にお付き合いってことにしないでください……!」
そう言ってわたしは踵を返し、教室から逃げ出してしまった。
ホームルームが始まりそうだったけど、もうそんなの関係なかった。
とにかく今は、凪くんから離れたかった。
……少し落ち着いた。
完全に忘れてた。きのうの分の日記を書いてなかったことに。
きょうが二日目ってことは、お付き合いを始めたのはきのうから。書いてなくて当たり前。
なんであんなこと言っちゃったんだろ……
「ののちゃん、大丈夫?」
「ふぇ!?あ、花梨ちゃんか……」
見つかってしまった。
「どうしたの?そういえば、きのう凪くんが彼氏になったって言ってたけど……なんかあった?」
これで確定した。わたしはきのう花梨ちゃんに伝えていたらしい。
「きのうの日記書いてなかったからお付き合いを始めたことを覚えてなくて、それで『お付き合い二日目だね』って言われて混乱しちゃって、『勝手にお付き合いってことにしないでください』なんて、ひどいこと言っちゃって……」
花梨ちゃんに後悔の気持ちを吐き出すと、瞼の奥が熱くなってきた。そして間もなく、涙があふれ出てきた。
もう、止められなかった。
「ののちゃん」
うっすらと、花梨ちゃんのやさしい声が耳に入ってきた。
「じゃあ、そう伝えればいいじゃん。そう伝えて謝ってごらん。だめなら、そのときはまた、考えればいいし」
「伝えれば、大丈夫……?」
「うん。大丈夫」
泣き止んだ後、わたしは教室に戻って、自席に向かおうとしている凪くんのところに行った。幸い、まだ一時間目が始まる前だった。
「ねえ凪くん。さっきはごめんね。わたし、きのう……」
「もういいよ」
凪くんは、それだけ言って、そのまま自席へ戻っていった。
……だめだった。
――絶望の音が、はっきりと聴こえた。
謎のスマホも置いてあった。開くと、きょうは四月十四日の、月曜日らしい。
日記帳を読んでみると、日記はもちろん、紙が貼ってあって、そこにわたしが病気だとかいろいろ書いてあった。
けど、不思議なことに、四月十三日の日記がない。
凪くんってひとと出かける予定だった日みたいだけど……
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「うん。きょうは月曜日だから学校?」
「ええ」
じゃあ準備しよ。一日ごとに記憶が消えると、月曜日の憂鬱感はほぼない。朝ごはん食べて、支度して。これで行けるかな?
「ピンポーン」
ん、日記に書いてあった花梨ちゃんか。
「ののちゃーん!」
「はーい!今行きまーす!」
「おはよ〜!」
「おはよ!」
「きのうのお出かけどうだった!?」
「それがね、謎に日記が書いてなくて……」
「え〜!?なんでかな……」
学校に着いたら、凪くんが席にやってきて、ちょっと小さな声で、
「きょうは、お付き合い二日目だね……!」
え、え……?「お付き合い」?
過去の日記にはそんなことひとことも書いてなかった。
若干好意を抱いていたっぽいことは書いてあったけど、急にそこまで進展されると困る。
混乱しすぎて挙動不審になってることは、誰が見ても明らかだった。
もはや、わたしに理性はなかった。
「え、えっと……お付き合いしただなんて日記に書いてなかったし……勝手にお付き合いってことにしないでください……!」
そう言ってわたしは踵を返し、教室から逃げ出してしまった。
ホームルームが始まりそうだったけど、もうそんなの関係なかった。
とにかく今は、凪くんから離れたかった。
……少し落ち着いた。
完全に忘れてた。きのうの分の日記を書いてなかったことに。
きょうが二日目ってことは、お付き合いを始めたのはきのうから。書いてなくて当たり前。
なんであんなこと言っちゃったんだろ……
「ののちゃん、大丈夫?」
「ふぇ!?あ、花梨ちゃんか……」
見つかってしまった。
「どうしたの?そういえば、きのう凪くんが彼氏になったって言ってたけど……なんかあった?」
これで確定した。わたしはきのう花梨ちゃんに伝えていたらしい。
「きのうの日記書いてなかったからお付き合いを始めたことを覚えてなくて、それで『お付き合い二日目だね』って言われて混乱しちゃって、『勝手にお付き合いってことにしないでください』なんて、ひどいこと言っちゃって……」
花梨ちゃんに後悔の気持ちを吐き出すと、瞼の奥が熱くなってきた。そして間もなく、涙があふれ出てきた。
もう、止められなかった。
「ののちゃん」
うっすらと、花梨ちゃんのやさしい声が耳に入ってきた。
「じゃあ、そう伝えればいいじゃん。そう伝えて謝ってごらん。だめなら、そのときはまた、考えればいいし」
「伝えれば、大丈夫……?」
「うん。大丈夫」
泣き止んだ後、わたしは教室に戻って、自席に向かおうとしている凪くんのところに行った。幸い、まだ一時間目が始まる前だった。
「ねえ凪くん。さっきはごめんね。わたし、きのう……」
「もういいよ」
凪くんは、それだけ言って、そのまま自席へ戻っていった。
……だめだった。
――絶望の音が、はっきりと聴こえた。
