スマホの目覚ましが鳴って起きたら、日記帳が置いてあった。
「まだ五時半か……」
なんでスマホがあるのかわかんないけど、とりあえず必読って書いてあるその日記帳を開く。
読んでみると、日記だけじゃなくて、わたしが前向性健忘っていう病気のこととか、その説明とか、いろいろ書いてあった。ひと通り読んで覚えて、その場所に置いておく。
中学校の入学祝いで買ってもらったらしいそのスマホを開くと、きょうは凪くんってひととのお出かけがあるらしい。九時に集合って書いてある。
……なんで九時集合なのにこんな時間に設定されているのか。
けど二度寝する気にもなれず、まだお母さんがいないリビングに行く。そしたら、事前に準備したであろうお出かけ用の持ち物と、服が置いてあった。着替えるのは出かける少し前でいいから、リマインダーに書いてあったとおり、きょうの行きの行程をメモ帳のアプリで探してみる。
九時に公園に集まったら、そこから駅まで徒歩十分、九時十六分発の電車に乗って川江まで行く。九時三十四分に着いて、そこから五分歩いて動物園に行くみたい。
朝ごはんを食べて少しゴロゴロしてたら、お母さんがリビングに来た。
「あ、乃々花!おはよう。きょうは早いわね。お出かけの準備?」
「おはよ〜!いや〜、ほんとはこんな早く起きなくていいはずなのに、なぜか目覚ましが五時半に設定されててさ……」
「きのう間違って設定しちゃったんじゃない?」
「そうかも……」
少しの間暇をつぶしたら、服を着る。ホワイトデニムに黒いカーディガンを羽織って、下は無難にジーパンを履く。ニュースを見ると、きょうは一日中晴れで、あったかいらしい。
髪をセットして、支度がぜんぶ終わったら、ちょうどいい時間。
「じゃあ、いってきまーす!」
「いってらっしゃい!楽しんできてね!」
公園なら歩いて十分弱。待ち合わせ時間の十分前くらいに着いたけど、そこにはもう、凪くんがいた。たぶんあれは凪くんで間違いない。わたしの勘がそう言ってる。
「あ、乃々花!こっちこっち!」
「今行くよ〜!」
特徴は日記帳とスマホで確認済みだけど、実際見るとやっぱりかわいい……あと、わたしのことは呼び捨てなんだ……なんか親近感あっていいかも。
そんなことを考えながら、凪くんのところに走っていった。
「おっはよ〜!」
「おはよ!」
「え、凪くんいつから来てたの?」
「八時半くらいかな……?」
「え、そんな早くから!?待たせちゃってごめんね……」
「いや、ぜんぜん!こっちが早く来すぎただけだから……!」
ふと時計を見たら、そろそろ九時を回ろうとしていた。
「じゃあ、そろそろ行こっか!わたし、一応行きはぜんぶ調べてきたんだけど……」
「あ、僕も調べてきたよ!」
まあ、さすがにそうだよね。見た感じ調べた行程はいっしょだったから、そのとおりに行くことにした。
――下原駅。
改札を抜けて、二番線に向かう。電車が来るまで、あと五分弱。
「そういえばさ、凪くんはなんの動物が好きなの?」
「えっと、ワカイヤ種のアルパカが好き!」
「え、ワカイヤ種ってなに?」
「アルパカには、毛が短くてモコモコなワカイヤ種と、毛が地面に長く垂れたスリ種がいるんだよ」
「へぇ〜、すごい詳しいね!アルパカか〜、もふもふしててかわいいよね〜!わたしはね、リスが好きなんだ〜」
「リスってすごい速いよね。ちっちゃくてかわいいし」
軽く調べたところ、鍵ヶ原動物園は地域最大級の動物園で、けっこういろんな動物がいるらしい。
しばらく動物の話をしていたら、電車がやってきた。ふたりで乗り込んで、ここから十八分間電車に揺られる。
川江駅に着いたら、五分くらい歩く。駅を出ていちばん大きい道を歩くだけだから、迷う心配はない。途中のコンビニで昼ごはんのおにぎりを買って、再び歩き出す。だんだんと動物園の姿が見えてきた。
中学生料金の二百円を払って、中に入る。
まず見えてきたのは、小鳥たち。とってもかわいい鳥たちが、大きい籠の中で元気に飛び回っている。
「あのちょっと緑色っぽい鳥は、アオジっていうんだって」
「頭とか背中は暗い色だけど、お腹は明るい黄色とか緑で、きれいだよね」
「あの虎斑模様の鳥は、えっと……トラツグミ!」
「鵺って呼ばれてる鳥だね。この模様が保護色になってるんだよ〜」
「え、凪くん、鳥にも詳しいの?」
「えへへ、動物は全般的に好きだから、よく調べてるんだ〜」
わたしが小三程度の知識しかないのも問題かもしれないけど、さすがに詳しい気がする。動物園に行きたいって言ってたのも納得……!
うわ〜、楽しい!この記憶があしたになったらなくなっちゃうのは、ちょっと寂しいけど。
次に回ったのは、小動物コーナー。
「あ、リス!いた!」
わたしは真っ先にリスが駆け回っている籠に目をつけた。
「お〜、右奥にいるリス、元気だね」
「激走リスかな?あ、けど、その左のリスのほうが元気じゃない?」
「たしかに。こっちは爆走リスだね」
そう言ってふたりで笑い合った。
「けど、この右のリスは家に入ったまんまなかなか出てこないね……」
「じゃあ、控えめリスだね」
リスに勝手にあだ名をつけながら、三十分くらいその籠をじっと見ていた。
その後は、ほかの小動物とか、爬虫類なんかを見て回って、あっという間にお昼。適当なベンチに座って、道中で買ったおにぎりをふたりで食べる。
「いや〜、すごい楽しい!凪くんはどう?」
「僕も、楽しい……!」
「来て良かったね!」
おにぎりを食べきって、午後の探索に入る。現在時刻はだいたい一時。
「じゃあ、午後は大きめの動物を見に行こっか!凪くんの好きなアルパカはどこかな〜?」
そう、この動物園には珍しくアルパカがいる。パンフレットに書いてあった。
「えっと……あ、あっちじゃない?行こう、乃々花!」
「うん!」
けど、移動途中に、フラミンゴとかの大きい鳥とか、ほかの大きい動物がいっぱいいて、なかなかアルパカにたどり着かない。もちろん道中での、凪くんによる動物うんちくラッシュは止まらない。
……いや、もうどんな動物でも豆知識言ってくるじゃん。まさか凪くんがこんなに動物が好きだとは……
「あ、凪くん!アルパカいたよ!」
「ほんとだ〜!やっぱかわいい……!」
まるで小さい子どもみたいに目を輝かせている凪くんを見ると、なんだかわたしまで嬉しくなってしまう。
「ねえねえ、知ってる?アルパカの赤ちゃんって、生後三時間で歩けるようになるんだよ!」
「え、知らなかった……すごいね、アルパカって」
「あと、幸せならハミングするし……」
こうやってアルパカトリビアを聞いてると、やっぱ動物の中でもアルパカは断トツで好きなんだな〜ってよくわかる。
しばらくずっとアルパカを見ていたら、だんだんと閉園時間が迫っていることに気がついた。最後にふたりでグッズを買いたいな……
「ねえねえ、あのグッズ、おそろいで買わない?」
「いいね、買おうよ!」
こうして、わたしたちはおそろいのアルパカキーホルダーを買って、動物園を後にした。
「いや〜、楽しかったね、凪くん!」
「うん!また来ようよ!」
「だね〜、また来たい!」
そんな話をしながら歩いていて、わたしは凪くんへの気持ちがとんでもなく大きくなっていることに気づいた。今にも破裂しそうなくらいに。
言うなら今だって、そう思った。
「ねえ、凪くん」
「ん?なに?」
「ちょっと、こっちの道に来てくれない?」
今見つけた、大通りから分岐する人通りのほぼない細い道に誘導した。
「えっと……どうしたの……?」
凪くんは、見るからに困惑していた。
わたしは一回深呼吸をして、おもむろに言葉を紡いだ。
「わたし、凪くんのことが好きです」
「……え?」
……言ってしまった。凪くんは硬直しちゃってるみたい。
「え、えっと……」
まあ、そりゃ急に告白とかされたら、そうなるのも無理はないよね……
「ぼ、僕も、乃々花のこと、好き、です……」
……え?ちょっと待って、凪くんもわたしのことが好き……?
つまり、両想いだったってこと?日記で見た限り、話し始めて間もないのに……?
い、いったん落ち着こう、わたし。
「……そっか。良かった」
気がついたら、わたしは凪くんのことを抱きしめていた。
凪くんも、まったく嫌な素振りは見せずに抱きしめ返してくれた。
これで、わたしたちの恋が始まったと、
――そう、思っていた。
「ばいばい凪くん!またあしたね!」
「ばいばーい!」
駅からちょっと歩いたところで別れて、家に向かう。
ひとりになったとたん、どっと疲労感に襲われた。楽しみで疲労が紛らわされていたことがよくわかる。
「ただいま〜」
「おかえり。どうだった?」
「すんごい楽しかったよ!けど、疲れた……」
「あした学校だし、支度して早めに寝たら?」
「うん、そうする……」
あ、花梨ちゃんに報告だけしとこ。
「花梨ちゃん!凪くんが彼氏になりました!もう寝るから返信はできないけど……伝えるだけ伝えておきますっ」
お風呂に入って、支度を済ませて自分の部屋に向かう。
部屋に着くなり、吸い込まれるように布団に潜り込んだ。
――枕元に置いてある日記帳には目もくれずに。
「まだ五時半か……」
なんでスマホがあるのかわかんないけど、とりあえず必読って書いてあるその日記帳を開く。
読んでみると、日記だけじゃなくて、わたしが前向性健忘っていう病気のこととか、その説明とか、いろいろ書いてあった。ひと通り読んで覚えて、その場所に置いておく。
中学校の入学祝いで買ってもらったらしいそのスマホを開くと、きょうは凪くんってひととのお出かけがあるらしい。九時に集合って書いてある。
……なんで九時集合なのにこんな時間に設定されているのか。
けど二度寝する気にもなれず、まだお母さんがいないリビングに行く。そしたら、事前に準備したであろうお出かけ用の持ち物と、服が置いてあった。着替えるのは出かける少し前でいいから、リマインダーに書いてあったとおり、きょうの行きの行程をメモ帳のアプリで探してみる。
九時に公園に集まったら、そこから駅まで徒歩十分、九時十六分発の電車に乗って川江まで行く。九時三十四分に着いて、そこから五分歩いて動物園に行くみたい。
朝ごはんを食べて少しゴロゴロしてたら、お母さんがリビングに来た。
「あ、乃々花!おはよう。きょうは早いわね。お出かけの準備?」
「おはよ〜!いや〜、ほんとはこんな早く起きなくていいはずなのに、なぜか目覚ましが五時半に設定されててさ……」
「きのう間違って設定しちゃったんじゃない?」
「そうかも……」
少しの間暇をつぶしたら、服を着る。ホワイトデニムに黒いカーディガンを羽織って、下は無難にジーパンを履く。ニュースを見ると、きょうは一日中晴れで、あったかいらしい。
髪をセットして、支度がぜんぶ終わったら、ちょうどいい時間。
「じゃあ、いってきまーす!」
「いってらっしゃい!楽しんできてね!」
公園なら歩いて十分弱。待ち合わせ時間の十分前くらいに着いたけど、そこにはもう、凪くんがいた。たぶんあれは凪くんで間違いない。わたしの勘がそう言ってる。
「あ、乃々花!こっちこっち!」
「今行くよ〜!」
特徴は日記帳とスマホで確認済みだけど、実際見るとやっぱりかわいい……あと、わたしのことは呼び捨てなんだ……なんか親近感あっていいかも。
そんなことを考えながら、凪くんのところに走っていった。
「おっはよ〜!」
「おはよ!」
「え、凪くんいつから来てたの?」
「八時半くらいかな……?」
「え、そんな早くから!?待たせちゃってごめんね……」
「いや、ぜんぜん!こっちが早く来すぎただけだから……!」
ふと時計を見たら、そろそろ九時を回ろうとしていた。
「じゃあ、そろそろ行こっか!わたし、一応行きはぜんぶ調べてきたんだけど……」
「あ、僕も調べてきたよ!」
まあ、さすがにそうだよね。見た感じ調べた行程はいっしょだったから、そのとおりに行くことにした。
――下原駅。
改札を抜けて、二番線に向かう。電車が来るまで、あと五分弱。
「そういえばさ、凪くんはなんの動物が好きなの?」
「えっと、ワカイヤ種のアルパカが好き!」
「え、ワカイヤ種ってなに?」
「アルパカには、毛が短くてモコモコなワカイヤ種と、毛が地面に長く垂れたスリ種がいるんだよ」
「へぇ〜、すごい詳しいね!アルパカか〜、もふもふしててかわいいよね〜!わたしはね、リスが好きなんだ〜」
「リスってすごい速いよね。ちっちゃくてかわいいし」
軽く調べたところ、鍵ヶ原動物園は地域最大級の動物園で、けっこういろんな動物がいるらしい。
しばらく動物の話をしていたら、電車がやってきた。ふたりで乗り込んで、ここから十八分間電車に揺られる。
川江駅に着いたら、五分くらい歩く。駅を出ていちばん大きい道を歩くだけだから、迷う心配はない。途中のコンビニで昼ごはんのおにぎりを買って、再び歩き出す。だんだんと動物園の姿が見えてきた。
中学生料金の二百円を払って、中に入る。
まず見えてきたのは、小鳥たち。とってもかわいい鳥たちが、大きい籠の中で元気に飛び回っている。
「あのちょっと緑色っぽい鳥は、アオジっていうんだって」
「頭とか背中は暗い色だけど、お腹は明るい黄色とか緑で、きれいだよね」
「あの虎斑模様の鳥は、えっと……トラツグミ!」
「鵺って呼ばれてる鳥だね。この模様が保護色になってるんだよ〜」
「え、凪くん、鳥にも詳しいの?」
「えへへ、動物は全般的に好きだから、よく調べてるんだ〜」
わたしが小三程度の知識しかないのも問題かもしれないけど、さすがに詳しい気がする。動物園に行きたいって言ってたのも納得……!
うわ〜、楽しい!この記憶があしたになったらなくなっちゃうのは、ちょっと寂しいけど。
次に回ったのは、小動物コーナー。
「あ、リス!いた!」
わたしは真っ先にリスが駆け回っている籠に目をつけた。
「お〜、右奥にいるリス、元気だね」
「激走リスかな?あ、けど、その左のリスのほうが元気じゃない?」
「たしかに。こっちは爆走リスだね」
そう言ってふたりで笑い合った。
「けど、この右のリスは家に入ったまんまなかなか出てこないね……」
「じゃあ、控えめリスだね」
リスに勝手にあだ名をつけながら、三十分くらいその籠をじっと見ていた。
その後は、ほかの小動物とか、爬虫類なんかを見て回って、あっという間にお昼。適当なベンチに座って、道中で買ったおにぎりをふたりで食べる。
「いや〜、すごい楽しい!凪くんはどう?」
「僕も、楽しい……!」
「来て良かったね!」
おにぎりを食べきって、午後の探索に入る。現在時刻はだいたい一時。
「じゃあ、午後は大きめの動物を見に行こっか!凪くんの好きなアルパカはどこかな〜?」
そう、この動物園には珍しくアルパカがいる。パンフレットに書いてあった。
「えっと……あ、あっちじゃない?行こう、乃々花!」
「うん!」
けど、移動途中に、フラミンゴとかの大きい鳥とか、ほかの大きい動物がいっぱいいて、なかなかアルパカにたどり着かない。もちろん道中での、凪くんによる動物うんちくラッシュは止まらない。
……いや、もうどんな動物でも豆知識言ってくるじゃん。まさか凪くんがこんなに動物が好きだとは……
「あ、凪くん!アルパカいたよ!」
「ほんとだ〜!やっぱかわいい……!」
まるで小さい子どもみたいに目を輝かせている凪くんを見ると、なんだかわたしまで嬉しくなってしまう。
「ねえねえ、知ってる?アルパカの赤ちゃんって、生後三時間で歩けるようになるんだよ!」
「え、知らなかった……すごいね、アルパカって」
「あと、幸せならハミングするし……」
こうやってアルパカトリビアを聞いてると、やっぱ動物の中でもアルパカは断トツで好きなんだな〜ってよくわかる。
しばらくずっとアルパカを見ていたら、だんだんと閉園時間が迫っていることに気がついた。最後にふたりでグッズを買いたいな……
「ねえねえ、あのグッズ、おそろいで買わない?」
「いいね、買おうよ!」
こうして、わたしたちはおそろいのアルパカキーホルダーを買って、動物園を後にした。
「いや〜、楽しかったね、凪くん!」
「うん!また来ようよ!」
「だね〜、また来たい!」
そんな話をしながら歩いていて、わたしは凪くんへの気持ちがとんでもなく大きくなっていることに気づいた。今にも破裂しそうなくらいに。
言うなら今だって、そう思った。
「ねえ、凪くん」
「ん?なに?」
「ちょっと、こっちの道に来てくれない?」
今見つけた、大通りから分岐する人通りのほぼない細い道に誘導した。
「えっと……どうしたの……?」
凪くんは、見るからに困惑していた。
わたしは一回深呼吸をして、おもむろに言葉を紡いだ。
「わたし、凪くんのことが好きです」
「……え?」
……言ってしまった。凪くんは硬直しちゃってるみたい。
「え、えっと……」
まあ、そりゃ急に告白とかされたら、そうなるのも無理はないよね……
「ぼ、僕も、乃々花のこと、好き、です……」
……え?ちょっと待って、凪くんもわたしのことが好き……?
つまり、両想いだったってこと?日記で見た限り、話し始めて間もないのに……?
い、いったん落ち着こう、わたし。
「……そっか。良かった」
気がついたら、わたしは凪くんのことを抱きしめていた。
凪くんも、まったく嫌な素振りは見せずに抱きしめ返してくれた。
これで、わたしたちの恋が始まったと、
――そう、思っていた。
「ばいばい凪くん!またあしたね!」
「ばいばーい!」
駅からちょっと歩いたところで別れて、家に向かう。
ひとりになったとたん、どっと疲労感に襲われた。楽しみで疲労が紛らわされていたことがよくわかる。
「ただいま〜」
「おかえり。どうだった?」
「すんごい楽しかったよ!けど、疲れた……」
「あした学校だし、支度して早めに寝たら?」
「うん、そうする……」
あ、花梨ちゃんに報告だけしとこ。
「花梨ちゃん!凪くんが彼氏になりました!もう寝るから返信はできないけど……伝えるだけ伝えておきますっ」
お風呂に入って、支度を済ませて自分の部屋に向かう。
部屋に着くなり、吸い込まれるように布団に潜り込んだ。
――枕元に置いてある日記帳には目もくれずに。
