朝起きたら、枕元に「必読」と書いてある日記帳が置いてあった。
読んでみると、わたしの受け入れがたい今の状況が書いてあった。
うーん、なんだろ、これ。
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「うん。これ、どういうこと?」
「紙に書いてあるとおりよ」
え〜……受け入れがたいけど、受け入れるしかないのか……
「ちなみに、乃々花いつもは普通に受け入れてるわよ」
え、いつものわたしすごっ!
とりあえず確認することは確認して、覚えることは覚えて、学校行きますか〜
「ピンポーン」
ん?誰か来た?あ、きのうの日記に「花梨ちゃんが毎朝家に来てくれると思う」って書いてあったから、花梨ちゃんか。
「ののちゃんいる〜?」
うん、やっぱり花梨ちゃんっぽい。
「今行くよ〜!」
ドアを開けると目の前に花梨ちゃんがいた。花梨ちゃんってすぐわかったのは、特徴に当てはまっているっていうのもあるけど、なぜか妙な確証があったから。
「ののちゃんおはよ〜!」
「おはよ!」
「いや〜、きのうマップ上でしか確認してなかったから、家が合っててよかったよ……」
「この家、表札がわかりやすいところについてるからね〜」
そんなこんなで学校に着いて、ホームルーム前に花梨ちゃんとか、凪くんとちょっと話す。
そしてホームルームが終わったら、授業。始業式がついこの間だったらしいから、まだ授業っぽくないのも若干混ざってるけど。
さて、授業。まず一時間目は数学。だけど……
「う〜ん、ぜんぜんわかんない……」
おそらく導入がもう終わってるであろう授業は、普通に中三の内容に入っていくから、小三までの授業しか覚えてないわたしは、ついていけるわけがない。
けど、みんなが問題演習に取り組み始めたとき、先生が、
「はい、これ、北澤さん用のプリント。一・二年のころ、こういうの作ってあげるっていう対応策が思いつかなくてごめんね……」
うわぁ……神ですか、先生は。
「たぶんもう、全ての授業で配られると思うから。安心してね」
やった!これで授業についていけない問題、けっこう解決?
数学の先生が言ってたとおり、きょう本格的な内容に入っていく授業は、ぜんぶプリントが用意された。無事に四時間目まで終わらせて給食を食べてる間、わたしはずっと凪くんのことを考えていた。
「凪くんとどっかお出かけ行きたいな〜」
日記を見てると、わたしは不思議と友達とか、そして凪くんに対する思いが変わってないらしい。
今週ずっと、こんなことを考えているのかな。
ここまでくるともう認めるしかない気がする。
――凪くんのことが、好きってことを。
思えば日記に「話しかけた」って書いた日から、もうわかっていたのかもしれない。認めたくなかっただけで。
昼休みに入ったら、すぐに凪くんのところに行って、
「ねえ凪くん、今週末って時間ある?」
「えっと、日曜日なら!」
「じゃあさ、日曜日、いっしょにお出かけしない?」
「……え?」
うーん、さすがに急すぎて無理かな……
「僕でいいなら、しよう!」
「え、いいの!?」
「うん!」
「え、じゃあ時間と集合場所は……」
な、なんかOKしてくれた……!
打ち合わせしたら、日曜日の朝九時に、中学校から百メートルくらいのところにある公園集合になった。楽しみすぎる……!
五・六時間目は全校集会だったからなんとなく聞き流して、帰りのホームルームが終わって下校時刻。
わたしは気づいたら花梨ちゃんに真っ先にお出かけの話をしていた。
「へぇ〜、凪くんとお出かけか……よかったじゃん!」
「うん!ほんとに」
「これ、あれじゃない?デートじゃない?」
「あ、たしかに……」
なんかとたんに恥ずかしくなってきた。
そういえば、記憶すべきことに「凪くんのことは一・二年のころから気になっていた」って書いてあったし、花梨ちゃんには、わたしの好意なんてとっくにバレてるのかもしれない。
「ふ〜、ただいま……」
「おかえり。お疲れさま〜」
記憶がなくなっても身体の疲労がなくなるわけじゃないから、一週間の学校が終わって普通に疲れた……
さて、リマインダーどおりにメモを……
〈四月十一日〉
・初めて朝に花梨ちゃんが来た
・授業のときにわたし専用のプリントを用意してくれることになった
・凪くんとお出かけすることになった
よし!あしたは土曜日で授業がないし、お出かけの準備しよっ!
じゃあ、疲れたしちょっと休憩……
「ピロン」
ん、通知か……あ、花梨ちゃんだ!
「お出かけってさ、どこ行くか決めてるの?」
あ……そういえば行程をぜんぜん決めてなかった……
「忘れてた……これから決める」
「凪くんなら一応連絡先あるから、どこ行きたいか訊こっか?」
え、なんで凪くんの連絡先あるの……?まあ、花梨ちゃん友達多そうだし、けっこう多くのひとの連絡先持ってても不思議ではないか……
「うん!お願い!」
「じゃあ、ののちゃんからの伝言ってことにしとくね」
「はーい」
うーん、なんて返ってくるんだろ。いつも本読んでるから、本屋さんとか図書館とか?
――十分後くらい。
「返事きたよ〜!」
凪くんもまあまあ返信早いな。
「どこに行きたいって言われた?」
「えっと、動物園だって!」
……え?
想定外すぎる……ここからいちばん近い動物園は、たしか電車で十五分くらいだった気がする。
「おっけ〜、ありがと!」
動物園かぁ……わたしも動物は好きだし、最近行ってないからいいかもしれない。
調べてみたら、下原駅から電車で十八分のところに川江駅っていう駅があって、そこから歩いて五分くらいの場所に「鍵ヶ原動物園」があるらしい。
「じゃあ、鍵ヶ原動物園にしようって送っといてくれない?」
「りょーかい!」
動物園か……
楽しみ……!
リマインダーに書いとかないと。
***
〈四月十一日(金曜日)〉
ようやく一週間の学校が終わった!毎日記憶を失ってるせいで、あんまり実感はないけど……
きょうは朝に花梨ちゃんが迎えに来てくれて、いっしょに登校した。来週から毎日いっしょに登校できる……!
あとは、授業に追いつけないわたしに、先生が専用プリントをくれた!これで少しは勉強がんばるぞっ!
それで、日曜日に凪くんとお出かけすることになった!動物園に行く!楽しみだな〜
***
読んでみると、わたしの受け入れがたい今の状況が書いてあった。
うーん、なんだろ、これ。
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「うん。これ、どういうこと?」
「紙に書いてあるとおりよ」
え〜……受け入れがたいけど、受け入れるしかないのか……
「ちなみに、乃々花いつもは普通に受け入れてるわよ」
え、いつものわたしすごっ!
とりあえず確認することは確認して、覚えることは覚えて、学校行きますか〜
「ピンポーン」
ん?誰か来た?あ、きのうの日記に「花梨ちゃんが毎朝家に来てくれると思う」って書いてあったから、花梨ちゃんか。
「ののちゃんいる〜?」
うん、やっぱり花梨ちゃんっぽい。
「今行くよ〜!」
ドアを開けると目の前に花梨ちゃんがいた。花梨ちゃんってすぐわかったのは、特徴に当てはまっているっていうのもあるけど、なぜか妙な確証があったから。
「ののちゃんおはよ〜!」
「おはよ!」
「いや〜、きのうマップ上でしか確認してなかったから、家が合っててよかったよ……」
「この家、表札がわかりやすいところについてるからね〜」
そんなこんなで学校に着いて、ホームルーム前に花梨ちゃんとか、凪くんとちょっと話す。
そしてホームルームが終わったら、授業。始業式がついこの間だったらしいから、まだ授業っぽくないのも若干混ざってるけど。
さて、授業。まず一時間目は数学。だけど……
「う〜ん、ぜんぜんわかんない……」
おそらく導入がもう終わってるであろう授業は、普通に中三の内容に入っていくから、小三までの授業しか覚えてないわたしは、ついていけるわけがない。
けど、みんなが問題演習に取り組み始めたとき、先生が、
「はい、これ、北澤さん用のプリント。一・二年のころ、こういうの作ってあげるっていう対応策が思いつかなくてごめんね……」
うわぁ……神ですか、先生は。
「たぶんもう、全ての授業で配られると思うから。安心してね」
やった!これで授業についていけない問題、けっこう解決?
数学の先生が言ってたとおり、きょう本格的な内容に入っていく授業は、ぜんぶプリントが用意された。無事に四時間目まで終わらせて給食を食べてる間、わたしはずっと凪くんのことを考えていた。
「凪くんとどっかお出かけ行きたいな〜」
日記を見てると、わたしは不思議と友達とか、そして凪くんに対する思いが変わってないらしい。
今週ずっと、こんなことを考えているのかな。
ここまでくるともう認めるしかない気がする。
――凪くんのことが、好きってことを。
思えば日記に「話しかけた」って書いた日から、もうわかっていたのかもしれない。認めたくなかっただけで。
昼休みに入ったら、すぐに凪くんのところに行って、
「ねえ凪くん、今週末って時間ある?」
「えっと、日曜日なら!」
「じゃあさ、日曜日、いっしょにお出かけしない?」
「……え?」
うーん、さすがに急すぎて無理かな……
「僕でいいなら、しよう!」
「え、いいの!?」
「うん!」
「え、じゃあ時間と集合場所は……」
な、なんかOKしてくれた……!
打ち合わせしたら、日曜日の朝九時に、中学校から百メートルくらいのところにある公園集合になった。楽しみすぎる……!
五・六時間目は全校集会だったからなんとなく聞き流して、帰りのホームルームが終わって下校時刻。
わたしは気づいたら花梨ちゃんに真っ先にお出かけの話をしていた。
「へぇ〜、凪くんとお出かけか……よかったじゃん!」
「うん!ほんとに」
「これ、あれじゃない?デートじゃない?」
「あ、たしかに……」
なんかとたんに恥ずかしくなってきた。
そういえば、記憶すべきことに「凪くんのことは一・二年のころから気になっていた」って書いてあったし、花梨ちゃんには、わたしの好意なんてとっくにバレてるのかもしれない。
「ふ〜、ただいま……」
「おかえり。お疲れさま〜」
記憶がなくなっても身体の疲労がなくなるわけじゃないから、一週間の学校が終わって普通に疲れた……
さて、リマインダーどおりにメモを……
〈四月十一日〉
・初めて朝に花梨ちゃんが来た
・授業のときにわたし専用のプリントを用意してくれることになった
・凪くんとお出かけすることになった
よし!あしたは土曜日で授業がないし、お出かけの準備しよっ!
じゃあ、疲れたしちょっと休憩……
「ピロン」
ん、通知か……あ、花梨ちゃんだ!
「お出かけってさ、どこ行くか決めてるの?」
あ……そういえば行程をぜんぜん決めてなかった……
「忘れてた……これから決める」
「凪くんなら一応連絡先あるから、どこ行きたいか訊こっか?」
え、なんで凪くんの連絡先あるの……?まあ、花梨ちゃん友達多そうだし、けっこう多くのひとの連絡先持ってても不思議ではないか……
「うん!お願い!」
「じゃあ、ののちゃんからの伝言ってことにしとくね」
「はーい」
うーん、なんて返ってくるんだろ。いつも本読んでるから、本屋さんとか図書館とか?
――十分後くらい。
「返事きたよ〜!」
凪くんもまあまあ返信早いな。
「どこに行きたいって言われた?」
「えっと、動物園だって!」
……え?
想定外すぎる……ここからいちばん近い動物園は、たしか電車で十五分くらいだった気がする。
「おっけ〜、ありがと!」
動物園かぁ……わたしも動物は好きだし、最近行ってないからいいかもしれない。
調べてみたら、下原駅から電車で十八分のところに川江駅っていう駅があって、そこから歩いて五分くらいの場所に「鍵ヶ原動物園」があるらしい。
「じゃあ、鍵ヶ原動物園にしようって送っといてくれない?」
「りょーかい!」
動物園か……
楽しみ……!
リマインダーに書いとかないと。
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〈四月十一日(金曜日)〉
ようやく一週間の学校が終わった!毎日記憶を失ってるせいで、あんまり実感はないけど……
きょうは朝に花梨ちゃんが迎えに来てくれて、いっしょに登校した。来週から毎日いっしょに登校できる……!
あとは、授業に追いつけないわたしに、先生が専用プリントをくれた!これで少しは勉強がんばるぞっ!
それで、日曜日に凪くんとお出かけすることになった!動物園に行く!楽しみだな〜
***
