朝起きたら、家の様子がいつもとは違った。
家具の種類やら配置やら、なにもかもが違って、わたしの所持物も知らないものばっかり。
持ってないはずのスマホもあった。
自分の部屋から出てリビングに来たけど、お母さんもちょっと年とった?
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「日記帳?なにそれ?」
「机の上にあるんじゃない?」
そして自分の部屋に戻って机の上を見ると、そこに日記帳があった。
「あったよ!でも、これがどうしたの?」
「乃々花は、前向性健忘っていう病気だから、きのうから記録をとるようにしたの」
そしてお母さんは、この病気についてと、病気だから記録を残さないといけなくて、きのうから日記をとることにしたことを教えてくれた。
「へぇ……じゃあ、この日記帳を開けたら、きのうの記録が出てくるってこと?」
「きのうの乃々花がちゃんと書いてたらね」
「お願い、きのうのわたし……」
おそるおそる日記帳を開くと、こう書いてあった。
『〈四月七日(月曜日)〉
きょうは、下原中学校三年生の始業式でした。そのときに、花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃんといっぱい話しました。
三人は中一からの友達で、花梨ちゃんは元気な子、奏音ちゃんはおっとりした子で、葵ちゃんは眼鏡をかけた真面目っぽい子でした。
あしたから学校がんばります。』
ふむふむ、きのうは中三の始業式で、中一からの友達の花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃんといっぱい話したのね。けどきょう話そうにも、特徴がアバウトすぎてわからんなぁ……まあ、学校行けばわかるか!下原中に行けばいいのね。
そうして、学校に着くと、ちょうど門のところで突然わたしに声がかかった。
「あ、ののちゃんだ!おはよ〜!」
「おはよ。えっと、花梨、ちゃん……?」
「お、そうそう!花梨だよ!きのう言った日記が効いたかな?」
「え、どういうこと?」
「日記のことは、わたしが提案したんだよ」
「え、そうなんだ……ありがと」
どうやら日記を書くのは花梨ちゃんが提案してくれたかららしい。
「あ、あと奏音ちゃんと葵ちゃんって……」
「じゃあ、今連れてくるね!」
葵ちゃんは唯一「眼鏡をかけてる」っていう見た目の特徴があったけど、眼鏡かけてるひとなんていっぱいいるし、奏音ちゃんに至っては「おっとりしている」としか書いてなくて全く見当もつかない。
「連れてきたよ〜」
「乃々花ちゃーん、奏音だよ〜」
「葵だよ。きのうぶりだね」
……あの内容の日記でなんでこのふたりがわかると思ったんだろう。
「ふたりともおはよ!覚えてなくてごめん。きょうは日記にちゃんと書く……」
あれ、ふたりって日記のこと知ってたっけ?
「うん!お願いね〜」
「任せたよ、乃々花」
あ、ふたりとも知ってるっぽい。
「うん。任せて!……って、もう朝のホームルーム始まっちゃう!」
「あ、ほんとだ!ばいばーい!」
そう言ってふたりが戻っていった後、自分の席に行ってホームルームをし、終わったらすぐに花梨ちゃんの席に行って、
「ねえねえ、さっきのふたりって、わたしが日記書いてること知ってたの?」
「ああ、きのうの下校中にののちゃんが自分で言ってたよ」
「え、そうだったんだ……」
まさか自分で言ってたとは。けど、この辺全部日記に書くとさすがに多すぎるな……
そして、三年生になってからたぶん初めての授業が始まった。まあ、始業式の翌日だから、そんな大したことはやらない。配布物とか自己紹介とからしい。これは授業ではないような……
そんなことを考えていると、ふと思った。わたしって勉強どうするんだろ。
きょう勉強しても、あした忘れちゃう。
ノートをとっても、毎日毎日覚えることが増えるだけ。
あれ……詰みじゃない?
せっかくの授業だけど、授業中ずっとそのことで頭がいっぱいだった。
……いつの間にか授業が終わってた。
なにもしてないのに疲れて、ふと花梨ちゃんのほうに目をやると、花梨ちゃんじゃない、その斜め前の席にいる男子のことが気にかかった。ちなみに花梨ちゃんは、ほかの友達とおしゃべり中らしい。その男子は、どうやらひとりで本を読んでいるみたい。
なぜか無性に声をかけたくなったのはなんだろう。
――名前も知らない、その子に。
二〜四時間目もその男子についてと勉強の謎で頭がいっぱいで全然集中できず。給食を済ませて昼休みに入ったら、花梨ちゃんの空いてるタイミングを窺って、声をかけに行った。
わたしは、さっきの男子を指さしながら、
「ねえねえ花梨ちゃん。あの本読んでる子、なんて言うの?」
「ああ、春宮凪くん?あの子のことたまに気にしてるよね、ののちゃん」
「えっ?」
「一・二年のころも同じクラスだったんだけど、よく凪くんのこと話してたよ〜」
まさか一・二年からずっと目をつけていたとは思わなかった。
「でさ、ののちゃん、二年の最後のほうに、『三年になったら勇気を出して話してみる』って言ってたよ?」
うそ、なに言ってるの、そのときのわたし。
「え、え?ちょ、忘れてるからノーカンに……」
「だめですー。もう三年生になったから、ほら!いってらっしゃい!」
「え、ちょっ、ちょっと待って花梨ちゃん!あと五分、五分だけ、時間ちょうだい……?」
幸い昼休みが終わるまであと十五分はある。
「わかった。あと五分ね」
当の本人がすぐ斜め前にいるのに、声が大きくなりすぎてしまったかもしれない。とりあえず深呼吸。吸って、吐いて。吸って、吐いて。よし。作戦を練ろう。
普通の人ならともかく、こんないかにも「一匹狼です」って感じのひとと話すのは、だいぶ難しい気がするけど……とりあえず話すための口実を考えよう。せっかく本を読んでるから、「なんの本読んでるの?」みたいな感じで話を振れば答えてくれるかな?
あとは勇気だけ。
そんなことを考えてたら、五分なんてあっという間。
「……いってきます」
「いってらっしゃい!がんばれ!」
わたしは彼の席の目の前まで行って、
「ねえ、なんの本読んでるの?」
凪くんが顔を上げて、目が合った。
その瞬間「ああ、かわいい」って、そう思ってしまった。
顔をしっかり見ると、さっきまでの一匹狼の雰囲気がうそみたいにかわいかった。
中性的で小柄な顔に、整った目鼻。なんでこれで誰とも話さないんだろ。
「えっと、恋愛ものの小説を……」
そして返ってきたのはまた意外なジャンルだった。あと声もかわいいとか反則でしょ。
「え、なんて名前?」
「えっとね……」
思わず突っ込んで訊いてしまった。その後は五分くらい本の話をして、花梨ちゃんのもとに帰ってきた。
「どうだった!?」
「すごいかわいかった!ぜんぜん話しづらいとかないし!」
「よかったじゃん!これからもいっぱい話したら?」
「うんっ!そうする!」
興奮気味に捲し立てるわたしに、花梨ちゃんもうれしそうな顔で応じてくれた。
話してるうちに昼休み終了のチャイムが鳴って、わたしは席に戻った。
「あ、勉強のこと訊くの忘れた……」
そう、わたしは凪くんのことともうひとつ、わたしが今まで勉強をどうしてたのかを訊こうとしていた。
けど、もうそれはあしたに回すことにして、五時間目は真面目に受けた。相変わらず授業っぽいことはしてないけど。
学校から帰ってきた。そういえば、朝日記帳の隣にあったメモ帳が気になったんだよね……なんか書いてあるのかな?
〈四月七日〉
・中学三年生の始業式
・花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃん(中一からの友達)と話した
・花梨ちゃんは元気な子で、奏音ちゃんはおっとりした子で、葵ちゃんは眼鏡をかけた真面目っぽい子
なるほど、日記のメモが書いてあるのか……じゃあとりあえずきょうの出来事のメモをとろう。
まずはあの友達三人の具体的な特徴。
〈四月八日〉
・花梨ちゃんは、明るい性格で同じ二組。ほかの友達としゃべっていることも多い。肌はけっこう白くて、見た目はけっこうかわいい。短髪。わたしのことは「ののちゃん」呼び。
・奏音ちゃんは、一組で、おっとりした性格。ポニーテールにしててだいぶ長髪。体は少しふくよかな感じ。わたしのことは「乃々花ちゃん」呼び。
・葵ちゃんは、三組で、なんか真面目そう。セミロングの髪をおろしてて、青みがかった眼鏡をかけてる。けっこう身長が高くて痩せてる。わたしのことは「乃々花」呼び。
うん、いったんいいかな?
で、きょうの重要イベント、凪くんのことも書いておかなくちゃ。
・凪くんと初めて話した。どうやら一・二年から同じクラスで、ずっと気になっていたらしい。思い切って声をかけに行ったら、顔も声もすごいかわいかった。あと恋愛小説読んでた。
よし。あとは夜、日記に書くだけ!
――夜になった。
***
〈四月八日(火曜日)〉
きょうも、三人と話しました。それぞれのひとの特徴をまとめておきます。
・花梨ちゃんは、明るい性格で同じ二組。ほかの友達としゃべっていることも多い。肌はけっこう白くて、見た目はけっこうかわいい。短髪。わたしのことは「ののちゃん」呼び。
・奏音ちゃんは、一組で、おっとりした性格。ポニーテールにしててだいぶ長髪。体は少しふくよかな感じ。わたしのことは「乃々花ちゃん」呼び。
・葵ちゃんは、三組で、なんか真面目そう。セミロングの髪をおろしてて、青みがかった眼鏡をかけてる。けっこう身長が高くて痩せてる。わたしのことは「乃々花」呼び。
あと、春宮凪くんと初めて話しました。花梨ちゃんの斜め前の席でした。どうやら一・二年から同じクラスで、ずっと気になっていたらしいです。思い切って声をかけに行ったら、顔も声もすごいかわいかったです。恋愛小説を読んでて、その話ができました。
あしたは、わたしがどうやって勉強していたかを、花梨ちゃんに訊きたいです。
***
なんか、ほぼメモのコピペみたいな感じだな……まあいっか!
今朝の反省を生かして、日記帳は枕元に置いておこう……
家具の種類やら配置やら、なにもかもが違って、わたしの所持物も知らないものばっかり。
持ってないはずのスマホもあった。
自分の部屋から出てリビングに来たけど、お母さんもちょっと年とった?
「おはよ〜」
「おはよう。日記帳見た?」
「日記帳?なにそれ?」
「机の上にあるんじゃない?」
そして自分の部屋に戻って机の上を見ると、そこに日記帳があった。
「あったよ!でも、これがどうしたの?」
「乃々花は、前向性健忘っていう病気だから、きのうから記録をとるようにしたの」
そしてお母さんは、この病気についてと、病気だから記録を残さないといけなくて、きのうから日記をとることにしたことを教えてくれた。
「へぇ……じゃあ、この日記帳を開けたら、きのうの記録が出てくるってこと?」
「きのうの乃々花がちゃんと書いてたらね」
「お願い、きのうのわたし……」
おそるおそる日記帳を開くと、こう書いてあった。
『〈四月七日(月曜日)〉
きょうは、下原中学校三年生の始業式でした。そのときに、花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃんといっぱい話しました。
三人は中一からの友達で、花梨ちゃんは元気な子、奏音ちゃんはおっとりした子で、葵ちゃんは眼鏡をかけた真面目っぽい子でした。
あしたから学校がんばります。』
ふむふむ、きのうは中三の始業式で、中一からの友達の花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃんといっぱい話したのね。けどきょう話そうにも、特徴がアバウトすぎてわからんなぁ……まあ、学校行けばわかるか!下原中に行けばいいのね。
そうして、学校に着くと、ちょうど門のところで突然わたしに声がかかった。
「あ、ののちゃんだ!おはよ〜!」
「おはよ。えっと、花梨、ちゃん……?」
「お、そうそう!花梨だよ!きのう言った日記が効いたかな?」
「え、どういうこと?」
「日記のことは、わたしが提案したんだよ」
「え、そうなんだ……ありがと」
どうやら日記を書くのは花梨ちゃんが提案してくれたかららしい。
「あ、あと奏音ちゃんと葵ちゃんって……」
「じゃあ、今連れてくるね!」
葵ちゃんは唯一「眼鏡をかけてる」っていう見た目の特徴があったけど、眼鏡かけてるひとなんていっぱいいるし、奏音ちゃんに至っては「おっとりしている」としか書いてなくて全く見当もつかない。
「連れてきたよ〜」
「乃々花ちゃーん、奏音だよ〜」
「葵だよ。きのうぶりだね」
……あの内容の日記でなんでこのふたりがわかると思ったんだろう。
「ふたりともおはよ!覚えてなくてごめん。きょうは日記にちゃんと書く……」
あれ、ふたりって日記のこと知ってたっけ?
「うん!お願いね〜」
「任せたよ、乃々花」
あ、ふたりとも知ってるっぽい。
「うん。任せて!……って、もう朝のホームルーム始まっちゃう!」
「あ、ほんとだ!ばいばーい!」
そう言ってふたりが戻っていった後、自分の席に行ってホームルームをし、終わったらすぐに花梨ちゃんの席に行って、
「ねえねえ、さっきのふたりって、わたしが日記書いてること知ってたの?」
「ああ、きのうの下校中にののちゃんが自分で言ってたよ」
「え、そうだったんだ……」
まさか自分で言ってたとは。けど、この辺全部日記に書くとさすがに多すぎるな……
そして、三年生になってからたぶん初めての授業が始まった。まあ、始業式の翌日だから、そんな大したことはやらない。配布物とか自己紹介とからしい。これは授業ではないような……
そんなことを考えていると、ふと思った。わたしって勉強どうするんだろ。
きょう勉強しても、あした忘れちゃう。
ノートをとっても、毎日毎日覚えることが増えるだけ。
あれ……詰みじゃない?
せっかくの授業だけど、授業中ずっとそのことで頭がいっぱいだった。
……いつの間にか授業が終わってた。
なにもしてないのに疲れて、ふと花梨ちゃんのほうに目をやると、花梨ちゃんじゃない、その斜め前の席にいる男子のことが気にかかった。ちなみに花梨ちゃんは、ほかの友達とおしゃべり中らしい。その男子は、どうやらひとりで本を読んでいるみたい。
なぜか無性に声をかけたくなったのはなんだろう。
――名前も知らない、その子に。
二〜四時間目もその男子についてと勉強の謎で頭がいっぱいで全然集中できず。給食を済ませて昼休みに入ったら、花梨ちゃんの空いてるタイミングを窺って、声をかけに行った。
わたしは、さっきの男子を指さしながら、
「ねえねえ花梨ちゃん。あの本読んでる子、なんて言うの?」
「ああ、春宮凪くん?あの子のことたまに気にしてるよね、ののちゃん」
「えっ?」
「一・二年のころも同じクラスだったんだけど、よく凪くんのこと話してたよ〜」
まさか一・二年からずっと目をつけていたとは思わなかった。
「でさ、ののちゃん、二年の最後のほうに、『三年になったら勇気を出して話してみる』って言ってたよ?」
うそ、なに言ってるの、そのときのわたし。
「え、え?ちょ、忘れてるからノーカンに……」
「だめですー。もう三年生になったから、ほら!いってらっしゃい!」
「え、ちょっ、ちょっと待って花梨ちゃん!あと五分、五分だけ、時間ちょうだい……?」
幸い昼休みが終わるまであと十五分はある。
「わかった。あと五分ね」
当の本人がすぐ斜め前にいるのに、声が大きくなりすぎてしまったかもしれない。とりあえず深呼吸。吸って、吐いて。吸って、吐いて。よし。作戦を練ろう。
普通の人ならともかく、こんないかにも「一匹狼です」って感じのひとと話すのは、だいぶ難しい気がするけど……とりあえず話すための口実を考えよう。せっかく本を読んでるから、「なんの本読んでるの?」みたいな感じで話を振れば答えてくれるかな?
あとは勇気だけ。
そんなことを考えてたら、五分なんてあっという間。
「……いってきます」
「いってらっしゃい!がんばれ!」
わたしは彼の席の目の前まで行って、
「ねえ、なんの本読んでるの?」
凪くんが顔を上げて、目が合った。
その瞬間「ああ、かわいい」って、そう思ってしまった。
顔をしっかり見ると、さっきまでの一匹狼の雰囲気がうそみたいにかわいかった。
中性的で小柄な顔に、整った目鼻。なんでこれで誰とも話さないんだろ。
「えっと、恋愛ものの小説を……」
そして返ってきたのはまた意外なジャンルだった。あと声もかわいいとか反則でしょ。
「え、なんて名前?」
「えっとね……」
思わず突っ込んで訊いてしまった。その後は五分くらい本の話をして、花梨ちゃんのもとに帰ってきた。
「どうだった!?」
「すごいかわいかった!ぜんぜん話しづらいとかないし!」
「よかったじゃん!これからもいっぱい話したら?」
「うんっ!そうする!」
興奮気味に捲し立てるわたしに、花梨ちゃんもうれしそうな顔で応じてくれた。
話してるうちに昼休み終了のチャイムが鳴って、わたしは席に戻った。
「あ、勉強のこと訊くの忘れた……」
そう、わたしは凪くんのことともうひとつ、わたしが今まで勉強をどうしてたのかを訊こうとしていた。
けど、もうそれはあしたに回すことにして、五時間目は真面目に受けた。相変わらず授業っぽいことはしてないけど。
学校から帰ってきた。そういえば、朝日記帳の隣にあったメモ帳が気になったんだよね……なんか書いてあるのかな?
〈四月七日〉
・中学三年生の始業式
・花梨ちゃんと奏音ちゃんと葵ちゃん(中一からの友達)と話した
・花梨ちゃんは元気な子で、奏音ちゃんはおっとりした子で、葵ちゃんは眼鏡をかけた真面目っぽい子
なるほど、日記のメモが書いてあるのか……じゃあとりあえずきょうの出来事のメモをとろう。
まずはあの友達三人の具体的な特徴。
〈四月八日〉
・花梨ちゃんは、明るい性格で同じ二組。ほかの友達としゃべっていることも多い。肌はけっこう白くて、見た目はけっこうかわいい。短髪。わたしのことは「ののちゃん」呼び。
・奏音ちゃんは、一組で、おっとりした性格。ポニーテールにしててだいぶ長髪。体は少しふくよかな感じ。わたしのことは「乃々花ちゃん」呼び。
・葵ちゃんは、三組で、なんか真面目そう。セミロングの髪をおろしてて、青みがかった眼鏡をかけてる。けっこう身長が高くて痩せてる。わたしのことは「乃々花」呼び。
うん、いったんいいかな?
で、きょうの重要イベント、凪くんのことも書いておかなくちゃ。
・凪くんと初めて話した。どうやら一・二年から同じクラスで、ずっと気になっていたらしい。思い切って声をかけに行ったら、顔も声もすごいかわいかった。あと恋愛小説読んでた。
よし。あとは夜、日記に書くだけ!
――夜になった。
***
〈四月八日(火曜日)〉
きょうも、三人と話しました。それぞれのひとの特徴をまとめておきます。
・花梨ちゃんは、明るい性格で同じ二組。ほかの友達としゃべっていることも多い。肌はけっこう白くて、見た目はけっこうかわいい。短髪。わたしのことは「ののちゃん」呼び。
・奏音ちゃんは、一組で、おっとりした性格。ポニーテールにしててだいぶ長髪。体は少しふくよかな感じ。わたしのことは「乃々花ちゃん」呼び。
・葵ちゃんは、三組で、なんか真面目そう。セミロングの髪をおろしてて、青みがかった眼鏡をかけてる。けっこう身長が高くて痩せてる。わたしのことは「乃々花」呼び。
あと、春宮凪くんと初めて話しました。花梨ちゃんの斜め前の席でした。どうやら一・二年から同じクラスで、ずっと気になっていたらしいです。思い切って声をかけに行ったら、顔も声もすごいかわいかったです。恋愛小説を読んでて、その話ができました。
あしたは、わたしがどうやって勉強していたかを、花梨ちゃんに訊きたいです。
***
なんか、ほぼメモのコピペみたいな感じだな……まあいっか!
今朝の反省を生かして、日記帳は枕元に置いておこう……
