元彼が担任になりました













なんで・・・・・・・・







なんであの人がここにいるのーーーーー!!!!!!!!!!


























    *




1ヶ月前


(みなと)ーここ分かんなーい!」

「それぐらい自分で解けよ…」

「家庭教師でしょーが!!」

 ダルそうに椅子に座り深くため息をする男————櫻木(さくらぎ)(みなと)は家庭教師として戌神家の所へ来ていた。

「大体これぐらいの問題解けない方がおかしいんだよ…頭どんだけ悪りぃんだよ、」

「その為の家庭教師でしょー!!」

 問題が解けずかなりイラついている女————戌神(いぬがみ)小春(こはる)は戌神家の次女である。

「だーかーらー!何回も言ってんじゃん、ここはこの公式に当てはめるだけだって!」

「だからだけじゃないの!それがむずいの!」

 小春は高校2年生にして学力は中学2年生程の馬鹿だ。
 小学生の頃は優秀と言われ、中学生になれば調子に乗って遊びまくり、高校生になってもまだ懲りず、高校2年生になる頃にやっと焦り始め、親に頼み込んで家庭教師に教われ始めた。
 そんな湊ももう社会人で教師として働きたいという夢を持っており、その練習として教師として働くまで家庭教師として戌神家に飛び込んできた。

「櫻木、そんなんじゃいつまで経っても教師になれねぇぞ」

 そして小春の部屋の壁に寄りかかって腕を組んでいる女————戌神(いぬがみ)鈴夏(りんか)は戌神家の長女でありながら小春の通う高校の養護教諭をしている。
 そして湊の同級生だ。

「だってもう3ヶ月も経つのに永遠に理解してくれねぇんだもん、そりゃ飽きるわ」

「教師に飽きるも飽きないもないんですー」

 この言い合いも湊が初めて家庭教師としてやってきた3ヶ月前から既に始まっており、犬猿の仲と言われている。

「?櫻木、ちゃんと小春のこと見てる?」

 2人の言い争いを無視して机のそばまできた鈴夏は2人の間に割って首を傾げた。

「見てるけど?」

 湊は何を言ってるんだと言わんばかりの顔で鈴夏を睨みつけた。

「これ、合ってるよ?」

「は?」

「え?」

 2人は一瞬何を言われたのかわからないと言った様子で鈴夏の顔を見てから答案用紙を見ると、答えはしっかりと合っていた。
 計算式もしっかりと合っていた。

「本当に!?やったー!!!!!やっと解けた!!」

「俺が…?そんなはずは…」

「問題文とちゃんと照らし合わせた?ちゃんと見ないと、こういうこともあるからね。気をつけないと」

 屈辱、といった様子で顔を顰めたら水飲んでくる、と台所の方へと向かった。

「さっすがお姉ちゃん!!」

「いえいえ」

 笑顔で答えた鈴夏だが、鈴夏も元々は凄く馬鹿で、高校一年生から頑張って塾に入り、ようやく授業に追いつき、受験できたのである。
 小春よりも馬鹿ではなかったが、小春のように馬鹿であった鈴夏である。

 そして実はこの2人————湊と小春はさらに1ヶ月前に両思いになり付き合っていた。
 こまめに連絡と取り合い、家庭教師という名の彼氏として夜中には問題を教えるといった嘘の目的で電話し、暇があれば毎日戌神家に来ては勉強を教えたり一緒に漫画を読んだりゲームをしたりと遊んでいた。


 が、しかし………

 この日から1週間経ったある日……電話をしている時に悲劇は起こった。

『こは、聞いてくれよ!!』

「お!どしたの?」

『俺、教師として短期間働くことになった!!』

「おめでと!!!!じゃあ当分は忙しくなるね!」

『だから家庭教師はやめようと思う。また明日お母さんに報告に行くわ』

「うん————」

 小春は嫌な予感はしていたがどうか現実にならないようにとその夜は手を握り空に向かって祈っていた。



 翌日、少し寝不足気味だった小春はメイクもせずに朝食を食べていた。
 食べ始めてすぐに鳴ったチャイムの存在にも気づかずに、真っ直ぐテレビの情報番組を見ていた。
 気づけば自分の部屋の自分の椅子に座っていた。

「こは、俺たち別れよう」

 なんのことかわからずあたりをきょろきょろと見渡すと、それが夢じゃないことに気づき涙が溢れていた。

「え、?」

「だから、別れようって」

「なんで?」

 小春は湊が別れるという意味をわかっていないんじゃ無いか、と思い2度、聞き返した。
 すると湊はあの問題を教える時よりももっと深く、ため息をした。

「他に好きな人ができた、と言っても諦めてくれないか?」

 勘弁してくれ、とでも言うように呆れたような疲れ切ったようなそんな顔をしていた。
 小春も元々は飽き性の人間だ。諦めようと思えば一瞬で吹っ切れるし、一瞬で忘れる。

「分かった。じゃあもう2度と目の前に出てこないで」

「分かった。ありがとう」

 感謝をされる理由が分からないと顔を顰める小春とすんなり別れを承諾してくれたことに感謝をすると満面の笑み――――とは少し違った安心し切った顔でいる湊。
 あぁ。本当に別れたんだなぁ、
 そう実感するのは遅くはなかった。

 湊も小春もそれぞれ鈴夏には言っていたから別れた時も報告はした。
 2人同時に、ではなくて湊はメッセージで。小春は直接。
 かなりのダメージを負ったのか、小春は泣き止まず、いつもなら飛びつく老舗で近所のケーキ屋のケーキにも手をつけなかった。



    *



この日で全てが終わった。
そう、思っていたのに________________



「はーい、皆、席につけ________________今日から百瀬(ももせ)莉里(りり)先生の臨時として2年3組の担任になってもらう櫻木湊先生だ」

 はい、では先生挨拶をお願いします。という教頭先生の後に続き挨拶を、した。あの人は。

「皆さん初めまして。今日から臨時で数ヶ月お世話になる櫻木湊です。ここのOBなので色々知っているつもりですが皆さんからも色々教えてください。よろしくお願いします。」