優しくない君でいい


「まぁ、こんなもんかな」
「……なんか、一本の映画見た気分」
「まぁ、そんぐらい濃い高校生活だったからかな」
「それでおにぃは、なぎちゃんに一途なんだねぇ」
「まぁね。渚くらいだよ、俺のこと見てくれてたの」

 ガチャリ、と玄関の鍵が開く音がして、愛おしい足音が近づいてくる。

「ただいま〜……って、あれ。まだ二人とも起きてたの?」
「おかえり。ご飯待ってたんだよ、なぎちゃんと一緒に食べたくて」
「先に食べてて良かったのに。遅くなっちゃってごめんね。……というか二人とも、何の話してたの?」

 楽しそうだけど、と上着を脱ぎながら渚が首を傾げる。
「中高の頃の話。俺ももう三十路突入かって思うと胃が重いわー……」
「おにぃはね。でもなぎちゃんは全然三十代には見えない、可愛い!」
「酷くない? それ暗に俺が三十代に見えるって言ってるよな」
「あはは、霖も三十代には見えないでしょ。……ほら、ご飯にしよ?」
「了解、今あっためる」と、キッチンに向かう。
 
 三人で過ごす温かい部屋は、夜の街に溶けていった。



最低限の優しさも、多少の我慢も。苦しみも、理不尽も。
人生に必要な事ではあると思う。

周りに気を遣ったり、いい子でいようとしたりするのも
優しさの安売りして大失敗してみるのも別にいい。

だけど
綺麗事の優しさみたいな、自分の身を削ってまで繕う優しさはいらない。
苦しみながら優しくならないでいい。
優しくないきみでいい。
きっと、そんな君を丸ごと愛してくれる人に出会えるはずだから。