優しくない君でいい



 薄暗く、それでいて温かい照明の中。
 とあるマンションの一室で、ゆっくり二人の時間は流れていた。

「あー、そういえばそうだった。ほんと、今思えば長い付き合いだよなぁ。」と、換気扇の下で煙草に火をつけながら歳の離れた兄が呟く。
「……急になに?」
 私はパソコンの画面と睨めっこしながら、キーボードを叩く。
「たくさん助けてもらったっけ。やっぱりあいつから貰ったものが多すぎて、何年経っても返しきれないよ」
「なに、惚気?」
「そーかも。」
 思っていたよりもあっさり認められてしまった。相変わらず甘ったるいなぁこの人達は、とため息をひとつ。それからパソコンを閉じて冷蔵庫の中からジュースを取り出した。

「ねぇ、二人の馴れ初め聞かせてよ」
「んー、長くなるよ?」
「いいよ。まだ帰って来ないんでしょ?」
「……じゃあいい機会だし話してあげようか」



 生まれ育った環境は、残酷に。時に人を大きく変えてしまうのだと思う。
 ある者は自信がないまま裏切られ続け
 ある者は心に傷を抱えたまま
 ただ笑って日常をやりすごしている。
 これはそんな二人の話。