告白タイムリセット

ピピピピ…ピピピピ…

聞きなれた嫌いな音が鳴り響く。
本当に寝る時間って一瞬だなと思わされる。
人間は人生の三分の一は寝てしまっているというのに。

ぼんやりとスマホに手を伸ばす。
けど右手が―――何か冷たいものを握っていた。

目をしかめながら右手に持つ”それ”を見た。

「なにこれボタン、?」

手に握られているのは、マットな質感の赤いプラスチックの…ボタン。
けれど、プラスチックにしては重たいし、異様に冷たかった。

こんなもの家にあった記憶も、買った記憶もない。

昨日は隼人はやらなきゃいけないことがあるからと言い
すぐに帰ったし、私はご飯を食べ終え風呂に入ったらすぐに寝た。

好奇心とかよりも恐怖心が勝ってしまう。
いつの間に私はこんなものを持ってしまったんだろう。

少し触っていると、ボタンの裏側に説明が書いてあるのを見つけた。

「タイムリセットボタン…、?」
裏にはそう一言だけかいてあった。
…なんだただのおもちゃかと安心し、力が抜けた。
そんな非現実的すぎて信じられるわけがない。

…けれど。ほんとにほんの少しだけ。
’’これが本物だったら,,って思っている自分がいる。

戻れるならば、…
もし本当に戻れるのならば、あの告白を見る前に戻りたい。

早い鼓動に気づかないふりをする。
これが本物なわけがあるまい。
好奇心を隠さないまま、ボタンに手をかける。

「…昨日の告白前に戻して」

目をぎゅっとつぶり、口をぎゅっと結ぶ。
意を決し、『それ』を押した。


「なんだ、なんにもな…」
そうあってほしかったの、無意識につぶやいた言葉は―――
かき消された。
私の心に。

そこは見慣れた教室で。
私は日誌を持っていた。そのすぐ横には『それ』もあった。
部屋着から一変。制服に変わっている。
時刻を見るとちょうど四時半。ホームルームが終わり、みんなが校門を出終えたであろうくらいの時間。

夢だ。できすぎてしまったただの夢。
私が願ってしまったがゆえにできた夢。
寝てしまえばきっと覚める。

…十分はたっただろう。
けれど現実に覚めることはない。
頬つねったらそのまま痛みが走る。

これは夢ではない。
「っ、もしかして倉庫裏にいるのかな」
もしいたとしても聞かずに、そのまま走って逃げればいい。
ごくりとつばを飲み、立ち上がる。