「み、南くんっ。好きです。付き合ってください!」
 

青い空。
真夏の入道雲。
ミンミンと鳴いている蝉の声。
これでこそ夏の風物詩。


本日染谷奈乃香は日直でごみ捨て&日誌提出の旅に
教室を飛び出していた。



ごみ捨てが終わり体育館裏を走っていた時、
ふと体育倉庫から声が聞こえて。
気になって近づいてみたわけなのだが…


まさかの好きな人(南くん)の告白現場で、離れようにも気になって離れることが
できずにいる。



今日は、猛暑日。部活も活動停止。
だから私は『誰もいない』と、勝手に思っていた。

たまたま居合わせたってだけで、私は何も悪くない…はずだ。

間からこっそり覗き見るとそこには、
顔を真っ赤にしてぎゅっと目をつぶっている…確かB組の沢田さん。
仕草がもうすでにヒロイン級な上に学校のマドンナの彼女。


告白を受ける確率なんて天と地の差がある私と比べると、
私が1%ならば、沢田さんはほぼほぼ90%。

けど私は正直そんなのどうでもよくて、(ごめんなさい沢田さん。)
南くんの反応だけが気がかりだった。


(付き合わないでほしい)なんて、思ってしまうことは
好きになってしまった宿命だ。


「…ごめん、気持ちはうれしいんだけど付き合えない。
告白してくれてありがとう。」


…なんということか。
一縷の望みが叶ってしまったようだ。
開いた口が塞がらなかった。自分で願っていたくせに。


「そっ、か。…時間くれてありがとう。これからも
友達としてよろしくね」

「うん。気をつけて帰ってね」



付き合ってほしくないとか言った自分が言えることではないが、
誰が見てもお似合いな二人だったと思う。
最近クラスでも噂されるくらいだったし、と心の中で思う。



…なんで振ったんだろう。といまさら疑問が浮かぶ。
好きな人がいるから…とかだったら?
いやもしかしたら、
沢田さんが普通にタイプじゃなかったからとか。

そんなことを考えていたら、迫りくる足音に気づかなかった。