陰陽師の花嫁

「いかがですか?」

「とってもおいしいです」

生まれてはじめて食べた餡蜜に、優菜はほっぺたが落ちそうだった。

その時、どこからか視線を感じた。

(誰かに、見られてる?)

「優菜様?どうかされましたか?」

しかし、こちらを見ているものは誰もいなかった。

「いえ…」

餡蜜を食べて、店を出た。

その様子を、愛菜が見ていた。

「見つけたわよ。優菜」

ふわりと甘い匂いがあたりに立ち込めた。

「なに、この匂い…急に眠く…」

そして、優菜は気を失った。


目を覚ますと、暗い蔵のようなところにいた。

身動きを取ろうにも、身体を拘束されていて、動くことができない。

(どうなってるの?胡蝶さんは?)

「目が覚めた?優菜」

聞き覚えのある声に優菜は、体を震わせた。

「ま…な…」

「うふふ。驚いた?時間をかけずに見つけることができてよかったわ」

愛菜の手には小刀が握られていた。

「ねぇ優菜。恭弥様ってとても綺麗な方よね」

小刀を優菜の喉元に近づけた。

「だから、私にちょうだい?」

刃物を喉元に突きつけられている恐怖で、叫びそうになった。

「あんなに綺麗な方、優菜にはもったいないわよ」

愛菜が優菜の着物を切り裂いた。

「こんなにいい着物まで着て。よっぽどいい暮らしをさせてもらっているのね」

ガッと壁に小刀を突きさした。

「生意気ね」

ニコニコと笑っているが、優菜はその笑顔に恐怖を感じた。

この顔は、愛菜の機嫌が最悪な時の顔だ。

「それになんで無能なあんたなんかが!」

小刀が優菜の顔を掠めた。

ツーッと赤い血が流れた。

「言いなさいよ。縁談を取り消すって。そしたら許してあげるわよ?」

「それは…」

バタン!

蔵の戸が開く音が聞こえた。

「優菜!」

「恭弥…様」

「なぜここが…」

愛菜の顔がみるみる青ざめている。

「優菜様!ご無事ですか?」

胡蝶が優菜に駆け寄り、縄を解いてくれた。

「藤宮家のご令嬢が、まさかこんなことをするとは…」

冷たい目を恭弥は愛菜に向けた。

「こ、これは…」

「これが巫女のやることですか?人を救うはずの力を人を傷つけるために使うとは…見損ないました」


愛菜は地面に膝をついた。

「さぁ、優菜。帰ろう」

恭弥に抱き抱えられて、優菜は恭弥の屋敷に帰った。