陰陽師の花嫁

夢見の力といえば、指で数えるほどしか存在しないという稀な存在だ。

「でも、私には巫女の力は開花しませんでした。そんな強力な力を持っているわけがありません」

「おかしいな…」

恭弥は何か考えていたようだが、パッと笑顔になった。

「それも踏まえて、藤宮家に聞いてこよう。まだ疲れが取れていないでしょ?もう休んだ方がいい」

恭弥は優菜を布団に寝かせ、額に口付けた。

「おやすみ」

優菜は静かに目を閉じた。


「優菜、今日は街に出かけよう」

朝食を食べてすぐ、恭弥に言われた。

「町に…ですか?」

「昨日言っていた必要なものの買い出しだ。護衛に胡蝶(こちょう)を一緒に連れていく。僕は少し用事があって、途中までしか一緒に行けないから」

「よろしくお願いしますね」

昨日目を覚ました時にいた女性が微笑んでいた。


町に出ると、たくさんの人で賑わっていた。

「僕が一緒にいられるのはここまでだ。あとは頼んだよ。胡蝶」

「はい。旦那様」

恭弥が歩いていくのを見送り、優菜と胡蝶の二人だけが残った。

「お忙しいのですね」

「今はまだいい方です。これからはもっと忙しくなってきます」

少し寂しい気持ちを感じた。

「さて、優菜様は、どこか見たい店はありますか?」

パンッと胡蝶が手を叩いて言った。

今まで、なにかを欲しがることなどを許されなかったため、聞かれてもよくわからなかった。

「あ、優菜様、あの店はいかがでしょう?」

胡蝶が指差したのは、甘味処の店だ。


恭弥は、藤宮家にやってきていた。

掃き掃除をしていた使用人に声をかけた。

「この家のご当主はご在宅ですか?」

「お待ちください」

しばらくして、屋敷の中に通された。

「これはこれは。一体なんのご用ですか?」

笑ってはいるが、どこか不機嫌そうな父親が出てきた。

「今回は優菜のことで参りました」

「やはりあの娘は期待はずれでしたか。なら早くこちらに返して…」

「そうではありません。優菜の巫女の力のことです」

「…!」

父親が息を飲んだ。

「なぜ、巫女の力があるのにも関わらず、いまだ開花していないのですか」

「なぜそのことを…あれは私が封じたはず…」

「封じた?」

しまったとでもいうように、父親は口をつぐんだ。

「優菜は、あなたと血のつながりはありませんね?」


優菜は、胡蝶と共に甘味処で餡蜜を食べていた。